ジェニファー・クロッカー博士(オハイオ州立大学教授)の講演会を開催しました
11月1日、オハイオ州立大学のジェニファー・クロッカー博士(Jeniffer Crocker/ Professor and Ohio Eminent Scholar, Ohio State University)の講演会 “The Constructed Self: The Costly Pursuit of Self-Esteem and Other’s Regard”を稲盛財団記念館大会議室で開催しました。クロッカー博士は、自尊心、自己価値、目標達成動機などの研究で知られています。
▽開催日時:2012年11月1日(木)16:30 -18:00
▽開催場所:京都大学稲盛財団記念館3F大会議室
▽講師:ジェニファー・クロッカー(オハイオ州立大学教授)
▽司会進行:内田由紀子(京都大学こころの未来研究センター准教授)
▽講演要旨:
People use both intrapersonal and interpersonal strategies to construct a sense of self-worth. Intrapersonally, people attempt to succeed in areas where self-worth is contingent. Interpersonally, they attempt to demonstrate their positive qualities to others so others to have a positive image of them. I will present research suggesting that these strategies may lead to short-term boosts but have long-term costs, because they undermine fundamental human needs for growth and connection―needs that are more effectively met by focusing on giving to others, rather than constructing self-esteem.
講演会前日の10月31日には、Culture-Kokoro Networkで運営している文化心理学ゼミにて博士をお招きし、内田准教授による研究内容紹介の後、大学院生2名(教育学研究科荻原祐二・矢野裕理)ならびに竹村幸祐・経営管理大学院助教(こころの未来研究センター連携研究員)による研究発表が行われ、クロッカー博士から有益なコメントをいただきました。
当日は、自尊心、自己価値随伴性、目標について、”The Constructed Self: The Costly Pursuit of Self-Esteem and Other’s Regard”という演題で講演いただきました。自分の価値を特定の物事(たとえば成績の善し悪しなど)に特化させてしまう(自己価値随伴性が高い)と、自尊心は変動しやすくなり、そのために不安定な心理状態になる。そして出来事(たとえば試験を受けること)は自分を「査定」する(自分がよくできているかそうでないかを判断する)ものとしてとらえられ、それゆえに恐怖心が経験され、結果として好い成果が残せなくなる。反対に自己価値随伴性が高くなければ、毎回の出来事はあくまで自分を高めるための通過点としてとらえられることなどが、実証データや具体例とともに語られました。
後半では、他者のために振る舞おうとする目標を持てば、実際に他者のためになる行動を行い、それにより自尊心が結果として高まる、というデータが示され、「自分がどう見られたいか」という目標ではなく「他者のためにどう振る舞いたいか」、という目標を持つことがポジティブな自己の状態を導くことが説明されました。
講演には学内外から30名ほどの研究者・院生が集まり、講演後には活発な質疑応答が交わされました。
当日の案内はこちら
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/en/cultureko_net/events/tlk20121101.pdf
(報告:内田由紀子 こころの未来研究センター准教授)
2012/11/12