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「京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画シンポジウム ワザとこころ パートⅡ ~ 祇園祭から読み解く」が開催されました

131125wazatokokoro.png 「京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画シンポジウム ワザとこころ パートⅡ ~ 祇園祭から読み解く」が、2012年11月25日、稲盛財団記念館3F大会議室(ポスター展示)にて開催されました。
▽開催日時:2012年11月25日(日)13:00~17:00
▽開催場所:京都大学 稲盛財団記念館3階大会議室
▽参加者数:103名
▽プログラム
趣旨説明 鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
映画上映 『京都歳時記 祇園祭』(監督:大重潤一郎)
基調講演 「祇園祭から見るワザとこころ~祇園祭の世界観」
脇田晴子(滋賀県立大学名誉教授・石川県立歴史博物館館長・文化勲章受章者)
報告1 「祇園祭の神事」橋本正明(八坂神社権禰宜)
報告2 「祇園祭の山鉾巡行について」吉田孝次郎(公益財団法人祇園祭山鉾連合会理事長)
パネルディスカッション 司会:鎌田 東二
■「祇園祭」を通して、内在するワザとこころを読み解く
wazakamata.png 2011年に開催した「ワザとこころ~葵祭から読み解く」に続き、京都を代表する祭り「祇園祭」に込められた「ワザとこころ」を探るシンポジウムが開催されました。
 はじめに趣旨説明を行った鎌田教授は、「センターでは『こころ(kokoro)に対して脳科学から宗教学までのあらゆる研究分野や研究方法を通してアプローチしていますが、その中のひとつとして『こころ』に迫る観点として『ワザ』に注目した『こころとモノをつなぐワザの研究プロジェクト』があり、伝統芸能・芸術、身体技法や修行など様々な分野の『ワザ』研究を進めています」とプロジェクトを紹介。「京都府との共同企画では、歴史都市・京都に伝わる伝統文化である祭にスポットをあて、昨年度のシンポジウム『ワザとこころ 〜葵祭から読み解く』に引き続き、シリーズ第二弾として『祇園祭』を通して、そこに内在する『ワザとこころ』を読み解くという企画をしました」と、今回のシンポジウム開催の背景を説明しました。
 さらに、「持続千年首都・平安京の長期的維持を支えた要素には、水、祈り、ものづくり、里山文化、地方との交通・交換ネットワークなどがあり、豊かな山城の水都であった平安京には官祭・民祭・私祭など様々なレベルで祈りや祭りが行われました。官祭の最大のものとして、昨年のシンポジウムでとり上げた『葵祭』があります。そして、官民挙げての最大の祭として『祇園祭』が平安京・京都を支え続けている、といえます。日本を代表する『祇園祭』の『ワザとこころ』を探求する今回のシンポジウムを通して、地元京都の伝統の奥深さと面白さを再発見・再検証していただければ幸いです」と、話しました。(鎌田教授の開催趣旨説明全文はこちらでお読みいただけます。)
wazaeiga.png 講演にさきがけて、大重潤一郎監督による映像作品『京都歳時記 祇園祭』が上映されました。自然や伝統文化をテーマとし、人間への深い洞察で様々な土地の人と文化を映像作品に残してきた大重監督が、日本人の魂である祇園祭を記録した貴重な映像です。会場の大画面に、都の人々が祭と向き合う姿、守り継がれる祭の伝統が息づく様子が映し出されました。なお、大重監督は、現在、2002年から12年の歳月をかけて沖縄県久高島の暮らしと祭祀を記録している映画『久高オデッセイ』の第三部の製作に取り組んでいます。(『久高オデッセイ』第三部・風章の制作に関する情報はこちらでお読みいただけます。)
■ 時代の変化のなかで町衆が支えた祭としてダイナミックに発展
wazawakita.png 基調講演では、滋賀県立大学名誉教授の脇田晴子先生(石川県立歴史博物館館長・文化勲章受章者)に「祇園祭から見るワザとこころ〜祇園祭の世界観」という演題でお話いただきました。
 日本中世の商業史や女性史、芸能史研究などで知られ、2005年に文化功労者、2010年に文化勲章受章を受賞されている脇田先生は、『中世京都と祇園祭―疫神と都市の生活 (中公新書)』をはじめとする多数の著書でも知られています。
 脇田先生は、祇園祭の誕生のいきさつと特色について、「恐ろしい疫病罹災から免れるために”疫病神”である牛頭天王を祀った、ある意味矛盾から生まれた祭」として、そのユニークな由来を紹介。平安時代末期、後白河法皇の勅命により作られたと言われる「年中行事絵巻」を示しながら「祇園御霊会」の様子をリアルに説明。鎌倉期にかけては、祭祀に奉仕することで商売や税の免除を受けていた「神人」と呼ばれる人々の存在があり、南北朝期にかけて町衆たちが祇園祭の担い手として活躍し始めるいきさつをお話しくださいました。
 祇園祭を支えた「町組」の成り立ちとその構成については、町組の地図や山鉾の所在図を示しながらの説明があり、応仁の乱で中断した祭が町衆の力で復活させ、神社から独立した不即不離の関係で町組主体の祭礼が成長していった様子、さらに各地へと祇園祭を手本にした祭が広まった様子などが詳しく語られました。
 基調講演の終わりに鎌田東二教授は、「さまざまな図版をもとに祇園祭の奥深さを解説くださった。葵祭が神を祀った古代の祭である一方、祇園祭は平安時代からは町人たちの自治的な力強さによって盛り上がり、その後全国でも祇園祭を手本とする祭が広がっていった。神社との関係も、不即不離を維持した祇園祭は、中世的な祭の典型といえます」とコメントしました。
■ 祭の復興にこめられた人々の思い。受け継がれるワザとこころ
wazahashimoto.png その後、報告1として、八坂神社権禰宜(ごんねぎ)の橋本正明氏に「祇園祭の神事〜神輿を中心として」という演題でお話いただきました。豊富な歴史資料をもとに、御霊会や神輿の初見からはじまり、神事「神輿洗式」など祇園祭の神事や神幸路のルート、担い手の変遷などを数々の神社に残された文献や写真資料をまじえながら説明くださいました。
 報告2では、祇園祭山鉾連合会理事長の吉田孝次郎氏が「祇園祭の山鉾巡行について」という演題でお話しくださいました。wazayoshida.png北観音山町に生まれた吉田氏は、50年以上に渡って囃子方を務め、『京都祇園祭の染織美術―山・鉾は生きた美術館』 (京都書院アーツコレクション) の監修もされています。山や鉾にかける染織品の歴史調査をもとに、織物が朝鮮王朝やアジアなど各地から渡来したルーツをはじめ、祇園御霊会が応仁の乱、戦争などの数々の歴史の波風を受け中断しながらも復興を遂げ、より華やかになっていった今昔のエピソードをお話しくださいました。また、祭の象徴ともいえる「祇園囃子」の発生と、囃子で奏でられる能管、太鼓、鉦(かね)それぞれの役割の変遷、山鉾のスタイルの移り変わりなどのエピソードを詳しくご紹介くださいました。
 報告後、鎌田教授は「お二人の話を通して、戦乱などで途絶えた祭を復興するプロセスをお聞きするなかで、東日本大震災後の被災地での祭の復興とあいまって、人々が何を大切にしてきたのか、祭の根本精神、ワザとこころを伝えていくさまが切実に伝わってきました。wazatouron.pngまた、古代中世近世の各段階の変化のなかで祇園御霊会からできあがってきた祭のダイナミックな展開を実感できました」と話すと共に、囃子で吹かれる笛についての考察として、自身が持つ石笛(いわぶえ)を披露したのち、「祭で用いられる笛が能管である理由について、世阿弥研究会での研究や自分の笛の経験をもとに考察すれば、古代の石笛からのルーツと関係性があるのではないか」と熱く語りました。
 引き続き、会場では3名の講演者の方々と鎌田教授によるパネルディスカッションが行われ、祇園祭のワザとこころに関する様々なエピソードや討論が活発に繰り広げられました。

2013/01/28

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