「共鳴するそれぞれの『物語』 自己と他者つなぐ村上作品」京都新聞(5/10朝刊)に河合俊雄教授のコラムが掲載されました
■公開インタビューで村上春樹氏が話した『物語』とは何か。河合教授がみずからコラムで解説 京都新聞5月10日付朝刊に、河合俊雄教授が寄稿したコラムが掲載されました。5月6日に行われた「村上春樹公開インタビュー」でテーマとなった「物語」について、河合教授は当日のインタビューの村上氏の話を振り返ると共に、村上作品や河合隼雄先生の存命中の言葉に光をあてながら解説しています。
共鳴するそれぞれの『物語』 自己と他者つなぐ村上作品 京都大学教授、河合隼雄財団代表理事 河合 俊雄 「河合隼雄先生との間では何がではない、何を共有したかという物理的な実感があって、それが『物語』というコンセプトでした」 これは、河合隼雄物語賞・学芸賞の設立を記念して6日に京都大学で行われた公開インタビューでの、冒頭における村上春樹さんのスピーチから私がメモしたものである。(中略) スピーチを聞いて、財団を設立するにあたって、河合隼雄のキーワードとして「物語」に焦点を当てて活動していこうとしたのにやはり間違いはなかったのだという確信を得た。けれども、その物語とはいったい何なのであろうか。(中略) 村上さんは、物語のつなぎ合わす力によって、魂のネットワークのようなものを作りたいと述べた。物語に呼応して感動することと、自分の物語を相対化することという、一見矛盾することが同時に指摘されていたのがとても印象的であり、腑に落ちた。つまり村上さんの書く物語は、もはや誰もが同一化できるようなイデオロギー的なものではない。時代の混迷が強まると、保守的で安っぽい物語に回帰しようという傾向が日本でも強まっているような危惧を覚えるが、そのような物語ではないであろう。それぞれの人が自分の物語を生きているなかで、村上さんの作品を読むことによって、自分の物語がそれに共鳴しつつ、またそれによって相対化されるのであろう。これは全体がある物語に染まるのではなくて、それぞれのミクロな物語が残りつつも、共振することなのであろう。 (京都新聞2013年5月10日付朝刊(文化)14面「フォーラム京」記事より抜粋)
【関連ページ】 □「河合教授が代表理事を務める河合隼雄財団が村上春樹公開インタビューを開催」(レポート) http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/news/2013/05/post_87.php □河合隼雄財団ホームページ http://www.kawaihayao.jp/
2013/05/10