河合教授の書評『色彩を持たない多崎つくると、彼の瞑想・巡礼・祈り』が『小説トリッパー』に掲載されました
ベストセラー小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』(村上春樹・著)の河合俊雄教授による書評『色彩を持たない多崎つくると、彼の瞑想・巡礼・祈り』が、週刊朝日別冊『小説トリッパー』2013年夏季号(朝日新聞出版)に掲載されました。
村上春樹の作品は、現代の意識や世界を反映しているところが興味深いが、この作品では個人の内面が前面に出ており、またここでは紙数が限られていることもあって、主人公のこころの遍歴と癒しにしぼってみていきたい。そこに心理療法家としての視点も入れていければと思う。
タイトルに「巡礼」ということばが入っているが、中沢新一は宗教の方法として、瞑想、巡礼、祈りがあることを指摘している。実はこの作品にはその三つの要素がそれぞれに認められるので、それを手がかりに主人公の変容をみていきたい。
(記事より抜粋)
タイトルに「巡礼」ということばが入っているが、中沢新一は宗教の方法として、瞑想、巡礼、祈りがあることを指摘している。実はこの作品にはその三つの要素がそれぞれに認められるので、それを手がかりに主人公の変容をみていきたい。
(記事より抜粋)
同書について、河合教授はすでに『新潮』7月号にて1万2千字に及ぶ論評を寄稿していますが、今回は、主人公・多崎つくるの「こころの遍歴と癒し」にフォーカスをあて、「1 瞑想」「2 巡礼」「3 祈り」という3つの要素に添って物語を読み解いています。
「1 瞑想」では、多崎つくるが経験する強烈な夢とイマジネーション体験を取り上げ、不思議な青年、灰田との交わりによって浮き上がった過去の女性たちとの関係性の表出について、ユングの『赤の書』でのアクティヴ・イマジネーションと対比させながら解説しています。続いて「2 巡礼」では、自分を裏切った友人たちを訪ねる主人公の旅の過程と最後に得られる気づきと癒しについて、「3 祈り」では、すべての巡礼を終えた多崎つくるの心の動きをみつめ、村上作品におけるコミットメントの変化について温かなまなざしで考察しています。
□関連情報
『小説トリッパー』雑誌紹介ページ(出版社)はこちら
『新潮』7月号論評の紹介記事はこちら
『村上春樹の「物語」―夢テキストとして読み解く―』(河合俊雄/著、2011年、新潮社)
2013/07/05