河合教授が代表理事を務める河合隼雄財団が村上春樹公開インタビューを開催しました
河合俊雄教授が代表理事を務める河合隼雄財団が、「村上春樹 公開インタビュー in 京都 ―魂を観る、魂を書く―」を5月6日、京都大学百周年記念ホールで開催しました。
河合隼雄物語賞・学芸賞の創設を記念して行なわれた今回のインタビューイベントには、全国より多数の応募があり、会場には約500名の参加者が集まりました。村上春樹氏は前半の講演で、河合隼雄先生との出会いと親交のエピソードを紹介。「同じ時間と、”物語”を共有できた唯一の人。小説家として暗く深い場所で創作する僕と、臨床家として患者と共に深い場所へ行く河合先生は、互いに通じ合っていた」と、異なる分野に身を置く二人が心の交流を重ねていた当時を振り返りました。村上氏が河合隼雄先生のダジャレを披露すると、会場には笑いが広がりました。
後半には、編集者・評論家の湯川豊氏が聞き手となり、インタビューが行なわれました。インタビューのなかで大切なテーマとなった”物語”について村上氏は、「人間は二階建ての家。人が文章を書いたり音楽をつくるのは地下一階。でも本当の”物語”は、さらに下に抜けた地下二階以下にある」と話し、人々がそれぞれ持つ物語を相対化しモデルとして提供することが小説家の役割であり、そこに共感が生まれることで感動のネットワークが生まれる、と話しました。過去の村上作品の変遷や、4月に出版され100万部を既に売り上げた長編作品『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』がどのように生まれたか、半年に渡る執筆期間を振り返りました。
イベントの最後には、河合俊雄教授が壇上に立ち、「昨年、財団を立ち上げ、今年、河合隼雄物語賞・学芸賞を創設した理由として、父の仕事のキーコンセプトであった “物語”を伝え、進めていきたいという思いがありました。財団を作るにあたり、父が関わった多くの人と会ったことは、私にとっては巡礼だったといえます。昨日、河合隼雄の家を訪れ、焼香し、1967年に作られた面接室や書斎を初めてご覧になった村上さんにとっても、今回の会が大切な巡礼だったのではないでしょうか。そして、お集まりの皆さんにとっても、ここに来たことが良き巡礼になることを祈って、終わりたいと思います」と、締めくくりました。
河合隼雄物語賞・学芸賞の第一回選考会は、5月20 日、授賞式は7月5日に行なわれます。
□河合隼雄財団のホームページ
http://www.kawaihayao.jp/
□『村上春樹の「物語」―夢テキストとして読み解く―』河合俊雄著
http://www.shinchosha.co.jp/book/330861/
2013/05/07