河合俊雄教授の英語論考が科研研究年報誌『身心変容技法研究』第7号に掲載されました
鎌田東二先生(上智大学グリーフケア研究所特任教授・京都大学名誉教授/宗教哲学・民俗学)が研究代表を務める身心変容技法研究会の科研研究年報誌『身心変容技法研究』第7号に、河合俊雄教授の英語論考が掲載されました。
この論考では、エラノス会議での講義を参照しながら、東アジアの精神性について述べるため、大乗仏教の中でも、特に華厳経に焦点が当てられています。
華厳経の思想は、西インドで生まれたものですが、インドの人々の瞑想時の体験とともに、中央アジアの光の神秘主義からも、影響を受けています。
さらに、華厳経の思想は中国に渡ると、哲学としても体系化されます。華厳経の本質は、「相即相入(全てのものは互いに溶け合っている)」の考えであり、それは壮大な曼荼羅として表されます。こうした華厳経の哲学は、錬金術の「融合」「死と再生」のイメージとも重なり、ユング心理学の「象徴」「元型」「共時性」といった概念について考える上でも意味をもつことを、著者は指摘しています。
このように発展してきた華厳経ですが、それは日本に渡ると、自然や芸術とのつながりの中で展開していきました。日本独自の、全てのものに魂が宿るといったアニミズム思想や、神道の影響から、日本では、自然の景色を描いたものが曼荼羅となり、自然の中で巡礼を行うことも、修行として非常に重要な役割を占めていきます。
また、こうした自然を、より小さく、より美的なものにして、心の内に取り入れた形として、日本の庭造りや生け花、盆栽などが発展していきました。ユング心理学や箱庭が日本で受け入れられたことには、日本文化に浸透した華厳経の思想も、深く関連しているのではないかと言及されています。
(解説:粉川尚枝 特定研究員)
Toshio Kawai. (2018). Transformation of East Asian spirituality: with the reference to Eranos lectures. Investigation of Arts and Principles of Body-Mind Transformation, 7, 267-272.
〔構成〕
1. Hua Yen sutra between nothingness and fullness
2. India and meditation
3. Central Asia and Light
4. Chinese philosophy and pragmatism
5. Japan: nature and aesthetics
身心変容技法研究会のウェブサイトでは研究年報をPDFでご覧いただけます
2018/04/19