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2018年第4回こころ研究会で京都大学大学院人間・環境学研究科の小倉紀蔵教授が発表を行いました

 2018年6月20日、第4回こころ研究会が稲盛財団記念館3階小会議室Ⅱにて開催されました。本年度の京都こころ会議のテーマ「こころと生き方」に沿って、京都大学大学院人間・環境学研究科の小倉紀蔵教授が「ニーチェ的に、〈アニミズム〉を生きる」と題した発表を行いました。 20180620_kokorokenkyukai401.JPG 20180620_kokorokenkyukai402.JPG   小倉紀蔵教授                   研究会の様子
 小倉教授の発表では、論理や因果関係を否定し、個人を「権力への意志によって闘争する多様態」として捉えたニーチェの考えが、〈アニミズム〉に近いのではないかとの着想が展開されました。この〈アニミズム〉とは、通常考えられているように、全てのものに生命が宿るという思想ではなく、むしろ闘争の過程で生命が〈あいだ〉に偶発的に立ち現れるとする思想であるとし、孔子が重視した「仁」が本来そうしたものであることが説明されました。また、わたしとは無数の他者やモノの関わる闘争によってつくられる知覚像の束であるとの考えから、その闘争の過程で偶発的にうまれる〈あいだのいのち〉を生きることが〈アニミズム〉的に生きることであり、ニーチェ的に生きることなのかもしれないと述べられました。  小倉教授の発表に引き続き行われたディスカッションでは、ニーチェ的な闘争の過程による偶発的な〈あいだのいのち〉の発生という考えと、無為によって第三のものとしてのイメージの立ち現れを期待する心理療法との対照性や、ダーウィニズム等が出現し、世界が因果関係で位置づけられていった時代状況とニーチェ思想との関連が指摘されました。また、ニーチェや孔子といった格言で知られるタイプの思想家の誤解されやすさと、その文体が持つ魅力についても話が及びました。そして、自己の定位機能や畏敬の念をどう考えるかという質疑から、自己にはさまざまな主体の闘争の意志が関わっており、そうした多重性や歴史性に開かれて生きることが幸せなのではないかということが意見されました。

(報告:梅村高太郎 特定研究員)

2018/07/09

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