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2020年第2回こころ研究会で小川さやか教授が発表を行いました

 2020年8月19日、第2回京都こころ会議研究会が稲盛財団記念館3階中会議室にて開催されました。本年度の京都こころ会議のテーマ「限界状況とこころ」に沿って、小川さやか教授(立命館大学大学院先端総合学術研究科・教授)が「窮地における嘘と笑い──タンザニアの都市住民を事例に」と題した発表を行いました。研究会には10名が出席し、またZoomでの同時配信を通じて5名が参加しました。

 発表では、タンザニアにて小川教授が自ら古着の行商人となって参与観察を行った際のエピソードが紹介され、現地で「ウジャンジャ」(=賢さ/ずるがしこさ)と呼ばれる行商人の特質をめぐって考察が展開されました。小川教授によれば、優れた「ウジャンジャ」を備えているとされる行商人は、その場その場を切り抜ける戦術としての「デブルイヤージュ」を身につけているといえます。窮地に陥ったときに人は咄嗟に素顔を見せるとしばしば思われているのとは対照的に、彼らはむしろ笑いを引き起こす滑稽なまでの嘘と演技を重ねることで、訪れる窮地を凌ごうとします。そのうえで小川教授は、坂部恵の理論を援用しながら、タンザニア商人の行動に見出されるのは、素顔と仮面の二項対立に基づく近代的な自己観とは異なる、即興的な変身をその根底に置く世界であると指摘しました。
 続くディスカッションでは、西洋とアフリカ、日本など文化圏による笑いの様相の違いや、定住と移住、都市と田舎、自然災害等の有無、宗教の違いといった社会背景の問題を中心として、積極的に議論が交わされました。

2020/08/28

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