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2020年第4回こころ研究会で石井美保准教授が発表を行いました

 2020年10月28日、第4回京都こころ会議研究会が稲盛財団記念館3階中会議室にて開催されました。本年度の京都こころ会議のテーマ「限界状況とこころ」に沿って、石井美保准教授(京都大学人文科学研究所)が「憑依とパトス——文化人類学の視点から」と題した発表を行いました。研究会には5名が出席し、またZoomでの同時配信を通じて11名が参加しました。

 石井准教授は、まず、これまでの憑依をめぐる人類学の議論、とりわけ機能主義や存在論的人類学に変わる視点として、ヴィクトーア・フォン・ ヴァイツゼッカーのパトスの概念を中動態の概念と結び付けて考えるところから新しいアプローチが生まれるのではないか、と提起しました。石井准教授によれば、インド=ヨーロッパ諸語が中動態を用いて表してきた状態として憑依を捉え直すことで、これまでの人類学の言説が囚われがちであった能動態と受動態の二項対立を逸し、主体の意志に関係なく、ある座/場所としての存在者において生じる出来事=力として憑依を考えることができるようになります。発表の後半では、ガーナ南部での事例が紹介され、憑依をめぐる言説が、強い衝動によって出来事へと巻き込まれていく中動態的な事態を表していることが説明されました。その上で石井准教授は、生命そのものがパトス的=中動態的な状態にあるといえると指摘し、近代以降疎外されてきた憑依といった事象を現代の生とも繋がりあるものとして再考することができるのではないか、と示唆しました。

 続くディスカッションでは、心理療法における中動態的状態や、憑依と演技の関係性など、異なる専門分野からの質疑が行われ、積極的に議論が交わされました。

2020/11/26

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