『Psychologia』第62巻に、河合俊雄教授の共著論文が掲載されました
『Psychologia』第62巻に、河合俊雄教授の共著論文が掲載されました。
Carmela Mento, Maria Catena Silvestri, Paola Merlino, Vanessa Nocito, Antonio Bruno, Maria R. Anna Muscatello, Rocco Antonio Zoccali, and Toshio Kawai. (2020). Secondary traumatization in healthcare professions: A continuum on compassion fatigue, vicarious trauma and burnout. Psychologia, 62 (2), 181-195.
この論文では、医療従事者の二次受傷(secondary traumatization)をテーマとして、それを引き起こす様々な心理的要因を明らかにすることが目的とされています。二次受傷には、共感疲労(compassion fatigue)、代理受傷(vicarious trauma)、燃え尽き(burnout)、といった現象が含まれますが、それらは医療従事者自身とそのケアの質の、双方に影響を及ぼすものです。本論文では、2014年~2019年の間に出版された論文のうち、二次受傷、共感疲労、代理受傷、燃え尽きを扱った18の論文を抽出し、文献レビューを行っています。
論文では、例えば、患者の苦しみや痛みを目撃したり、外傷体験を聞くことが、医療従事者に強いストレスを与え、二次受傷を引き起こす可能性があり、特に長期的にそうした場に身を置いたり、職場と家庭でのサポートが欠如していたり、セルフケアや適切な専門家としての境界を維持する力が弱いことが、その引き金になりやすいと指摘されています。また、こうした状態は、医療従事者の職場でのミスや、ケアの質の低下に繋がり、抑うつ感や苛立ち、頭痛や倦怠感といった、自身の情緒・身体へも影響を及ぼすことが示唆されています。
著者らは、医療従事者が職業的なストレスに対処し、職業生活の質を保つためにも、二次受傷の予防は重要であり、燃え尽きに至る前に、ストレスや共感疲労の程度を評価しながら、自己効力感や楽観性、回復力を高めることが必要ではないかと述べています。医療従事者自身が、自らの情緒を統制し、患者の体験から適切に距離をとる力をつけ、また、スーパービジョン等を活用して、柔軟性と新たな視点を持って患者に関わると共に、医療従事者間での共感・理解や支持的な職場環境も、予防の一助となるのではないかと示唆されています。
* 本論文はオンラインでも閲覧することができます。
https://doi.org/10.2117/psysoc.2020-B013
2021/04/13