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河合俊雄教授が監修を務めた『C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢』が出版されました

河合俊雄教授が監修を務めた『C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢』が、2021年7月に創元社より出版されました。

本書は、ユングが「個性化過程の夢象徴」とのタイトルで行った2回のセミナーの記録で、ノーベル物理学賞受賞者ヴォルフガング・パウリが心理療法で報告した夢が素材として取り上げられています。今回、日本での翻訳書の出版にあたって、河合教授は監修を務め、監修者によるまえがき「セミナー記録「パウリの夢」の価値」を執筆しています。

教授はまえがきの中で、本書が著作ではなくセミナーの記録であることで、ユングの率直で自由な語りから、ユングの臨床における視点が垣間見える点が貴重ではないかと指摘しています。特に“夢分析、更には心理療法にとっても、心理療法家がその場に存在し、夢や相談者にコミットすることが、本質的に重要である”とのユングのコメントや、“夢を解釈する際、象徴的な解釈を当てはめるよりも、個々の夢のイメージに沿っていく”ユングの夢への関わり方は、現代の心理療法にとっても非常に参考になるものではないかとしています。

また、このセミナーが行われた時期が1930年代後半という、ユングの思想の転回点と重なっていることにも教授は着目しています。前期の主著『自我と無意識の関係』にあるような“意識と無意識の対立と相補的関係”を重視するユングの基本姿勢は、確立した自我を前提とした西洋の伝統や西洋人のこころに基づいたものであることを、ユングはこのセミナーの頃には既に意識し始めており、本書の夢の解釈には、前期の基本姿勢とともに、錬金術の研究を基盤とした後期の主著『結合の神秘』への展開の萌芽の両方が見られるのではないかと教授は解説しています。本書は、私たちが西洋と東洋でのこころの深層との取り組み方を考える際にも役立つものではないかとして、まえがきを終えています。

 

「本書は、序論にも書かれているように、ノーベル物理学賞受賞者であるヴォルフガング・パウリの受けた夢分析の内容について、ユングがアメリカで一九三六年と一九三七年に英語で行った二回のセミナーの記録である。パウリはユングと一緒に心理学と物理学における「共時性」の概念について一書を著していることでも知られている。パウリの夢については、ユング全集第一二巻の『心理学と錬金術』のなかでもマンダラ象徴に関して詳しく取り上げられていて、特にその「世界時計」の夢は有名になっている。そのためにここで取り上げられている多くの夢も、またその解釈もすでにある程度は知られている。

しかし本書の意義は、…」

(「監修者によるまえがき/河合俊雄」より)

 

出版社の書籍ページでは、こちらの監修者によるまえがきと、目次、謝辞、序論と第一講の冒頭を読むことができます。
https://www.sogensha.co.jp/tachiyomi/4273

 

○書籍データ
C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢
著:C・G・ユング
編:S・ギーザ-
監修:河合俊雄
訳:猪股剛、宮澤淳滋、鹿野友章、長堀加奈子
出版社:創元社(2021年7月20日)
単行本: 448ページ
ISBN-13: 978-4-422-11765-2
出版社の書籍ページ https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4273

2021/07/20

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