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『ブータンと日本をつないだ京大のキーパーソン達』―第3回ブータン文化講座『ブータンを見つめた京都大学との56年』が開催されました

130501bhutan.png こころの未来研究センターでは、2012年4月にブータン学研究室を開設して以来、ブータンに関する幅広い研究活動と成果の発表を行なっています。学内外からの識者を招き、ブータンの文化を一般の方々と共に学ぶ「ブータン文化講座」は、昨年の第1回、第2回に続いて第3回目を迎えました。今回は、『ブータンを見つめた京都大学との56年』というテーマで国立民族学博物館の栗田靖之名誉教授を講師にお迎えし、コメンテーターには京都大学白眉センターの坂本龍太助教が登壇しました。ブータンと京都大学との56年間に渡る交流の軌跡をたどり、ブータンの過去・現在・未来をみつめる貴重な機会となりました。
■ブータンと日本をつないだ京都大学のキーパーソン達
 栗田先生は京都大学文学部を卒業ののち、大阪女子大学助教授を経て国立民族学博物館に勤務し、2003年に退官、同博物館の名誉教授ならびに総合研究大学院大学名誉教授となられました。専門は文化人類学で、ブータンに関する著書や論文を多数発表されています。
bhutan5.png ブータンと日本の関係のはじまりは、さかのぼること1910年、チベット仏教修行者の多田等観がブータンを通過したそうですが、それは非公式の記録とのこと。大きなきっかけは1957年、ブータンよりケサン・ワンチュク王妃が来日するとの情報を、当時朝日新聞カルカッタ支局の特派員から本多勝一氏(京大OB)に知らせてきたことを機に、京大の桑原武夫教授、芦田譲治教授が歓迎したのが、京都大学とブータン王国の交流の始まりだそうです。以来、王妃と桑原教授の親交は長く続くことになります。さらに王妃が来日した折、同じく京大OBの中尾佐助氏(大阪府立大学名誉教授)がブータンへ入国を願い出、1958年に日本人初のブータン公式訪問が実現しました。中尾氏は翌年『神秘の王国ブータン』というエッセイを発表し、日本エッセイストクラブ賞を受賞。ブータンを含むアジアの植物分布調査を進め、「照葉樹林文化論」を提唱し、日本の文化人類学に大きな影響を与えました。
スクリーンショット 2013-05-09 12.41.11.png インドとの緊張関係が続いた1960年代のブータンでは、西岡京治・里子夫妻が農業指導者として赴任、69年にはケサン・ワンチュック王妃が再来日、さらに山岳部による学術調査隊がブータンに入国し、3代国王との面会を果たします。70年には大阪万博にブータンが参加し、栗田先生がブータン代表団の接遇を行ない、ブータンとの絆をさらに強めていきました。国連加盟や第3代国王の死去など激動の70年代を経て、81年には「日本ブータン友好協会」が設立され、桑原教授が初代会長に就任。85年には京大山岳部がマサ・コン峰への登頂に成功。86年にはブータンと日本の外交関係が樹立。栗田先生はこの時期、文化人類学者としてブータン各地を調査旅行し、貴重な学術資料となる民具の収集に励まれました。
■ブータンとの交流、文化無償援助から見えてきたもの
bhutan7.png こうしてブータンと日本が、京都大学関係者をキーパーソンに国同士の絆を深めていく様子をつぶさに見てきた栗田先生。ご自身のブータンとの関わりも調査研究に加えて90年代、中央図書館、国立博物館への文化無償援助に取り組まれるなどブータンの文化発展に大きく寄与されました。ブータンへの支援活動を振り返り、栗田先生は「ブータンへの援助を続けることで、私はブータン側から日本からの援助をもたらすサンタクロース扱いされるようになった。このことは、反省すべき点だと感じている。これをふまえて、私は日本もブータンから何かを『受け取る』必要があると考えます。GNH(国民総幸福量)の理念から得ることなど、いま、日本がブータンから学ぶことで、関係が対等になる、それが大切だと考えます」と話しました。
 講演の後半には、コメンテーターとして京都大学白眉センターの坂本龍太助教が登壇しました。少年の頃からのブータン行きの夢を果たし、ブータンにおける地域在住高齢者ヘルスケア・システムを確立するための国家プロジェクトで研究活動に取り組む坂本助教は、「いま、自分がこうしてブータンで研究できることも、日本とブータン、京都大学とブータンが関係を強固にできたことも、栗田先生の功績によるものが大きい」と話し、栗田先生の功績を讃えつつ、今後、自身の研究をブータンと日本の両国間で発展させていきたい、と話しました。
■祈りと瞑想が日課のブータン人。GNH(国民総幸福量)の理念から日本が学べることは
bhutan8.png 質疑応答では、話題となっているブータンのGNH(国民総幸福量)の理念が生まれた経緯と実態について、「1972年からGNHの提唱が始まったが、そこには国民の欲望を抑圧し、コントロールする意図がありました。仏教精神と重ねて個人の幸福を考えていく上で有益な仕掛けといえます。ブータンにもテレビの普及は著しく、一日に3時間テレビを観ていると言われています。しかし一方で、毎朝起きれば必ずお経を唱えて瞑想をするのがブータン人。祈りと瞑想のなかで、ブータン人は心の旅をし、今、自分が何を本当に欲しているのかを静かに問いかけることができるのです。行き過ぎた欲望を持つ日本人は、ブータンのGNHの理念から考えるべきことがたくさんあります」と話しました。
 講座の最後にあたり、司会を務めた熊谷誠滋准教授は、「ブータンと日本がいまこうして強い絆で結ばれている背景には、要所要所で活躍をした栗田先生や桑原先生のようなプレイヤーがいました。そのプレイヤーをまとめたハブ的な役割を果たしたのが京都大学といえるのではないでしょうか。今後も京大は、ブータンと日本をつなぐフィールドとして、プレイヤーたちの蒔く種を育て、多くの花を咲かせていきたいと考えています」と、会を締めくくりました。
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[DATA]
▽開催日時:2013年4月16日(木)17:00~19:00(16:30 開場)
▽開催場所:稲盛財団記念館3階大会議室
▽概要:
講演者:栗田靖之(国立民族学博物館・名誉教授)
コメンテーター:坂本龍太(京都大学白眉センター・助教)
司会:熊谷誠慈(京都大学こころの未来研究センター准教授)
▽参加総数:120名
□こころの未来研究センター ブータン学研究室
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/Bhutan/index.php
□京都大学ブータン友好プログラム
http://www.kyoto-bhutan.org/

2013/05/08

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