Journal of Analytical Psychology Latin American Conference 2021にて、河合俊雄教授が口頭発表を行いました
Journal of Analytical Psychology Latin American Conference 2021 (2021年4月9-11日/Sao Paulo (オンライン開催)) で、河合俊雄教授が“The symbolic and non-symbolic aspect of image: Clinical and cultural reflections”の題で口頭発表を行いました。
この大会は、Jung’s Collected Works 10巻のタイトル“Civilization in Transition”をテーマとして、3日間のPlenary SessionとBreak-out Sessionから構成され、国際分析心理学会(IAAP: International Association for Analytical Psychology)のサポートを受けて行われたものです。
Journal of Analytical Psychology Latin American Conference 2021の詳細ページは、以下になります。
https://thejap.org/sao-paulo-2020
この発表の中で教授は、非象徴的なイメージの持つ意味について論じました。
教授は、ユングが分析心理学の基本原則として、イメージを象徴的に理解することを明言した一方で、夢で見た内容が後に現実で生じるような予言的な夢などを、共時性として説明しながら、イメージの非象徴的な側面についても多くの例を挙げていることに触れ、イメージが象徴性を持たないことには、二面性があるのではないかと述べています。
例えば、実際に見たものがそのまま出てきただけの夢であったり、心身症、心的外傷後ストレス性障害、境界性パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害などの病理と関連して生じるイメージの非象徴性は、象徴性の欠如として捉えることができます。
一方で、非象徴的イメージには、象徴的イメージよりも深い意味を持つ場合があるとして、ユングがウィルヘルムの死の前に見た彼のビジョンを例に挙げ、魂の現前のような直接性(directness)を持つ非象徴的イメージについて考察していきます。そして、現実と仮想・虚構、個人間の境界が薄れる現代において、イメージの象徴性も失われつつあるのではないかとして、教授はこの非象徴的イメージの直接性が持つ意味に言及します。その例として、村上春樹氏が昨年出版した小説『一人称単数』を挙げ、ユングのビジョンのように、予期せず魂同士が真に出会う状況がこの小説では起こり、登場人物の癒しや心理的問題の解決に繋がることに注目しながら、現代ではこうした非象徴的で直接的な出会いに意味があり、それは心理療法や夢でも起こり得るのではないだろうかと提起しました。
Toshio Kawai. The symbolic and non-symbolic aspect of image: Clinical and cultural reflections. (Journal of Analytical Psychology Latin American Conference 2021. 2021.4.9-11. Sao Paulo (on-line))
2021/04/13