ジェイムズ・ヒルマン著『魂のコード』の翻訳書が復刊され、河合俊雄教授が解説を執筆しました
本書は、ユング派の心理療法家ジェイムズ・ヒルマンの著作“The Soul’s Code: In Search of Character and Calling”の全訳で、鏡リュウジ氏が翻訳を務めて1998年に出版されたもので、今回、朝日新聞出版から復刊されることとなりました。今回の復刊に際して、河合俊雄教授は、解説「どんぐりと守護霊」を執筆しています。
教授は、ヒルマンがユング心理学を背景とする心理療法家の中でも、各個人の持つ無意識を超えた、文化や人類に共通する集合的無意識をいっそう強調してきた人物であることに触れた上で、本書でヒルマンが主張する「どんぐり理論」について解説していきます。
このヒルマンの「どんぐり理論」は、“自分の中には生まれつき一粒のどんぐりがある”とするもので、私たちの持つ性格や問題が、遺伝や過去の体験によって決まるのではないという見方がされています。本書は心理学の専門書ではありませんが、これはヒルマンが自身の心理学で重視してきた、“魂の自律性”とも重なるものではないかと教授は述べています。ヒルマンは実際の人々の例を挙げながら、このどんぐりは豊かな才能や能力とともに、悪や暴力とも結びつくものでもあることを示した上で、自分の中のどんぐりとどう付き合っていくのかを考えていきます。本書のヒルマンの議論の深さに言及しながら、教授も心理療法家の立場から、悲惨な生育史の中でも子どものどんぐりは破壊されずに存在していることや、どんぐりを見出し共有する人の存在の大切さ、多くの人が謙遜して自分のどんぐりを隠している現代の文化のあり方などを、心理療法の事例と結びつけて論じています。
○書籍データ
魂のコード
著:ジェイムズ・ヒルマン
訳:鏡リュウジ
出版社:朝日新聞出版(2021年7月)
ISBN-13: 978-4-02-251769-2
2021/07/20