『ミネルヴァ通信「究」』に河合俊雄教授の連載第28回が掲載されました
ミネルヴァ書房の発行する月刊誌『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』2018年12月号に河合俊雄教授の連載「こころの最前線と古層」が掲載されました。
今回のテーマは「現代の夢と共有」です。
今回の連載では、夢との関わり方について、現代で夢を他者と共有することの意味をテーマに論じています。
著者は、実体のないこころは、個人が何らかの価値や内容を他者と共有することによって存在するとまず指摘し、現代の心理療法でも、クライエントが自分のこころの中だけのことをセラピストに語り、それが二人の間で共有されることに意味があると述べています。そして、これは夢の場合も同様で、夢がクライエントからセラピストに語られ、共有されることが重要と捉えています。
しかし、心理療法における夢の共有は、クライエントとセラピストの間だけのもので、夢が影響力をもっていた中世のような、コミュニティでの夢の共有とは異なることに著者は着目していきます。
心理療法の外で何らかの形でクライエントの夢に関連することが共有される瞬間や、専門家によるスーパーヴィジョンや事例検討会で夢がより深いところで共有されることが、クライエントの変化に繋がることを著者は経験的に指摘し、心理療法におけるクライエントとセラピストの二人だけの共有よりも広い次元で、夢が共有されることに意味があるのではないかと述べています。
(解説:粉川尚枝特定研究員)
こころの最前線と古層(二八)「現代の夢と共有」河合俊雄
前近代において、正夢のように夢の世界との直接的なつながりが可能であったのに対して、近代の意識は直接夢の現実性を感じ取る手段はなくて、心理学による解釈という方法を必要とすることを前回に扱った、もっとも中世においても、占い師などによる媒介や解釈は始まっていたとも言える。
直接性と同じように、前近代における夢との関係で大切なのは共有である。…
(論考より)
出版社のページ(こちらから『究』の講読が可能です)
https://www.minervashobo.co.jp/book/b415970.html
2018/11/29