2018年度こころの科学集中レクチャー
「こころの謎~心身の健康と社会・文化のダイナミックス~」を開催しました
2019年2月27日~3月1日の3日間に渡り、内田由紀子准教授の企画・進行で、2018年度こころの科学集中レクチャー「こころの謎~心身の健康と社会・文化のダイナミックス」を稲盛財団記念館大会議室で開催しました。北山忍先生(ミシガン大学心理学部
教授・京都大学こころの未来研究センター特任教授)、中田光紀先生(国際医療福祉大学大学院医学研究科公衆衛生学専攻 教授・国際医療福祉大学東京赤坂心理・医療福祉マネジメント学部心理学科 教授)、大平英樹先生(名古屋大学大学院情報学研究科心理学講座 教授)を講師にお迎えし、講義と活発な議論が行われました。
北山先生の午前の講義では、従来の文化心理学が欧米文化の特徴としてきた独立性が、アラブ・アフリカといった地理的に近接する文化圏で協調性を支えていた人々の心理行動傾向を、独立性の装置として転用することで成立した、という大胆な仮説が提示されました。また、午後の講義では、尿酸という一見健康を害する物質が脳の抗酸化作用のため進化的に生き残ったという仮説が提示されました。いずれも壮大なタイムスケールでの仮説で、文化心理学の広がりを感じさせる内容でした。
中田先生の午前の講義では、学部生や専門外であるこころの研究者にもわかるような疫学入門の講義がされました。午後の講義では、睡眠や免疫がそれぞれ幸福感や抑うつ傾向といった心理変数とどのように関連するか、疫学調査の結果を示されました。健康というこれまでこころの研究ではあまり扱われてこなかった観点について、その重要性と研究の方法論がよくわかる内容でした。
大平先生の講義では、予測的符号化の枠組みでの感情の理解というテーマでお話しされました。午前の講義では、内受容感覚を中心とする感覚入力の予測とその予測誤差を減じる過程として感情を理解するという基礎編についてお話しがありました。午後の講義ではその予測系が色々な理由・条件でうまく働かないときにそれに対応した感情障害が生じる過程が計算モデルを含めて示されました。こころとからだの脳での計算を通じた相互作用のあり方がよくわかる内容でした。
いずれの講義も最先端のワクワクする内容であるばかりでなく、先生同士・受講生との生き生きとした議論が行われ、研究というものがどのように生まれ展開していくか目撃できる3日間となりました。(報告:中山真孝特定助教)
○参加者の感想(アンケートから抜粋)
・大学1年生からこのような貴重なセミナーに参加することができ、とても良い刺激をいただきました。心理学一つでもいろいろな方向に進む道があること、そこから深く探求する道があることを自分の目で見ることができました(学部生)
・免疫学と心理学の関連性、そして内的モデルなど、普段文化心理学で学ばないことについての話は面白かったです。自分も免疫学を勉強しようと思いました。(大学院生)
・教科書とはまったく違うとってもおもしろい研究の数々は、自分自身の今後やっていきたいことを考える上で、絶対に基準になると思いました。(学部生)
・専門の異なる先生方が講義をしてくださり、とても勉強になりました。数値、モデルを使って、解釈する大切さも学びました。(学部生)
・個人的な興味として学んでいた分野の本格的なセミナーに初めて参加させていただきました。専門とは異なる分野の詳しい研究を学ばせていただいたことにより、より学際的な視野を育むことができたと強く感じました。また、よりこれらの分野への興味もわきました。(学部生)
・第一線でご活躍されている先生方から直接講義を受け、濃密なディスカッションにも参加することができて、大変刺激を受けました。(研究者)
・高度で最新の研究を分かりやすく学ぶことができてよかったです。周りが先輩や教授ばかりで緊張しましたが、質問にも皆様丁寧に答えてくださり、とても感謝しております。学部の専門科目だけでは触れることのない、深い内容を知ることができ、有意義な3日間でした。(学部生)
・先生方の講義はもちろんとても難しかったのですが、それでもわかりやすく大変面白かったです。いつかは自分でディベートにも積極的に参加できるようになることを目標に、今後の学部生活の学びを頑張ります。(学部生)
[DATA]
2018年度 こころの科学集中レクチャー
「こころの謎 ~心身の健康と社会・文化のダイナミクス~」
日 時:2019年2月27日(水)、28日(木)、3月1日(金)10時~18時
場 所:京都大学 稲盛財団記念館3階中会議室、大会議室
定 員:30名程度
参加人数:40名
2019/03/07