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『子育て支援と心理臨床』第17号に、河合教授の論考「発達障害と発達の非定型化におけるプレイセラピー」が掲載されました

 『子育て支援と心理臨床』第17号に、河合俊雄教授の論考「発達障害と発達の非定型化におけるプレイセラピー」が掲載されました。

河合俊雄. (2019). 発達障害と発達の非定型化におけるプレイセラピー. 子育て支援と心理臨床, 17, 42-49.

〔構成〕

1. なぜ発達障害は増加しているの?

2. 発達障害診断史

3. 京都大学こころの未来研究センターの発達障害のプロジェクトより

4. 発達障害を主体の弱さとしてとらえる

5. 発達障害に対して心理療法が有効でないと考えられた理由

6. 主体を誕生させる心理療法

7. 狭く限られる中で生まれる主体

8. ASD的な臨床像の増加と社会構造

9. 選択肢が増加し葛藤や対立が見えない社会構造

10. 現代社会における主体性

11. 発達において親子関係以外の場が持つ重要性‐支援しすぎない姿勢

この論考では、2000年以降、発達障害とされる子ども・大人が増加していることにふれ、発達障害的傾向と子育て支援について述べています。 発達障害は、脳・中枢系の障害で、その症状や問題行動に心理的な意味が認められないことが特徴とされるものですが、現在は過剰に発達障害の診断がついている印象で、現代の心のあり方の影響や、親・社会が発達障害として支援しようという方向性がうかがえる、と著者は指摘しています。 その上で、発達障害を「主体の弱さ」として捉える提案がされています。発達障害の人が、誰かと離れたり何かを自分で選んだりすることが難しく、他者に影響されやすい、自発性がないのは、この「主体の弱さ」のためと考えられるということです。そのため、発達障害に対しては「主体を誕生させる心理療法」が必要になるとして、発達障害への心理療法の成功例を基に、発達障害の本質と心理療法のポイントを論じています。 一方で、発達障害のように見える症状の増加は、現代の社会構造や意識の変化とも関連しているのではないかとも指摘しています。社会構造の中で個人の自由度が増し、自ら選ぶ必要から主体性が求められるようになった反面、親子関係の変化やSNSでのつながりなどにより、他者との分離や個人の主体が立ちあがることがむずかしくなり、現代では発達障害的心性がより促進されているのではないか、と著者は考えています。 子どもについても、発達が非定型化し、心理的に非常に幼かったり、発達段階で通常とは発達の順序が逆になっていたりと、発達の偏りが見られる子どもは非常に増えていると指摘しています。著者はこうした発達障害の子どもに対して、訓練したり教育したりするとますます主体が育ってこない可能性を論じ、むしろ主体性をどう促進するか、支援しすぎないという姿勢も必要であると考えています。そして、コミュニティーの中で子育てをしていた時代と異なり、現在は核家族化が進み、子育て支援として親子関係以外の場が必要になっていることも踏まえ、そうした場の一つとして、プレイセラピーで子どもの主体を作っていくことも大事になるのではないかとの考えを述べています。

(解説:粉川尚枝 特定研究員)

 

『子育て支援と心理臨床』のページ

https://www.minervashobo.co.jp/book/b451810.html

 

2019/05/23

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