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『ミネルヴァ通信「究」』に河合教授の連載第34回が掲載されました

 ミネルヴァ書房の発行する月刊誌『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』2019年6月号に、河合俊雄教授の連載「こころの最前線と古層」が掲載されました。  

今回のテーマは「心理療法と共同体機能」です。  

 今回の連載では、現在、心理療法がサービスとして提供され、その対象が広がる中で、出会う相談者の問題やそれへの支援も変化していることが取り上げられています。 著者は特に、あまり心理療法を受けるつもりがなく、養育環境なども非常に悪い人が、心理療法によるサポートをサービスとして受けることで、飛躍的な成長や改善を遂げるケースが近年目立つことを指摘しています。例えば、子育て支援での無料のセラピーや学生相談などで、子どもの問題行動や発達の遅れ、親子関係、学業や友人関係が改善するような事例です。

 こうした心理療法では、相談者を受け入れて自然に接しながら話を聴くことで、心理療法が相談者にとっての一つのこころの定点となるような、心理療法の基本的なスタンスが、相談者の変化や成長におおいに寄与していることに、著者は着目しています。そして、親の養育が十分でない場合、前近代では親類や共同体からの助けがありましたが、現代では家族や自然な共同体に十分な資源がなく、心理療法がこうしたサポートを肩代わりしているようだと著者は述べています。現代においてこうした時代の変化やこころの変化が生じる中で、こころの定点を提供するという意味で、心理療法の役割の重要性が言及されています。

(解説:粉川尚枝 特定研究員)

こころの最前線と古層(三四)「心理療法の内と外」河合俊雄  
前回から心理療法のあり方が変わってきたことに伴うこころの変化を取り上げていて、心理療法がサービス化するなかで、内面の問題として心理療法をとらえるというパラダイムがむずかしくなってきていることをまず検討した。今回はサービス化によって出会うクライエントの問題とそれへの支援の変化についてふれたい。もともとの心理療法は、自主的に来談して、料金を支払うことのできる人を想定している。これはつまり、クライエントにある程度の社会的・心理的能力があって、個人で解決する自覚と意欲が伴うことを前提としている。 ところがサービスによって対象を広げると、そのような前提を満たしていない人と出会うことになる。…

(論考より)

出版社のページ(こちらから『究』の講読が可能です) https://www.minervashobo.co.jp/book/b456562.html

2019/05/30

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