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河合俊雄教授が監訳を務めた『分析心理学セミナー 1925 - ユング心理学のはじまり』が出版されました

河合俊雄 教授が監訳をおこなった『分析心理学セミナー 1925 - ユング心理学のはじまり』が、2019年6月に創元社より出版されました。

 本書は、ユングが1925年にチューリッヒで行ったセミナーの記録を編集したもので、これまでに1989年版、2012年フィレモン・シリーズ版が出版されてきました。今回、日本での翻訳書の出版にあたって、河合教授は監訳を務め、まえがきを執筆しています。

 教授はまえがきの中で、本書の高い歴史的・内容的価値に触れ、「ユング心理学の成立と内容を、ユング自身の体験に基づいて示してくれる優れた入門書となっている」と本書を評しています。本書のセミナーは、時期的にユングの著作『赤の書』と「自我と無意識の関係」の中間に位置するため、『赤の書』に示されたユング自身のイメージとの対話の体験と、その体験に基づいて書かれた「自我と無意識の関係」の体系的な理論との、ギャップを埋めるものとなるためです。また、ユングがこのセミナーを一般向けに英語で行ったこと、多くの自分の夢を取り上げて解釈したことにも教授は着目し、ユングが自身の体験・理論について多くの人に広く開かれていこうとする姿勢や、夢やイメージのリアリティを大切にする視点が伝わるものであると述べています。

 本書の記録は、ユング自身も確認していたとされ、また、ユングの秘書アニエラ・ヤッフェが『ユング自伝』を編集する際にも引用したことからも、非常に信頼性・重要性がうかがえるものだと教授は指摘しています。また、このセミナーの参加者には女性が多く、女性の立場からの質問や疑問が多いことにも触れ、グローバリズムやLGBTといったテーマについてなど、ユングの体験や理論をどのように現代において生かせばよいのかという問いにも、本書の内容は繋がっていくはずであると考えています。

(解説:粉川尚枝 特定研究員)

 本書は、ユングが一九二五年にチューリッヒで行ったセミナーの記録で、まず非常に歴史的意義が高く、またユング心理学をユングの個人的経験を背景として学ぶことのできる優れた入門書であり、さらにディスカッションの中などでユングがかなり思いきった発言をしているので、専門とする人にも新しい知見と刺激を提供することのできる貴重な本であると言えよう。ユングは自分の心理学についてあまり体系的に書くことをしなかった人で、十八巻におよぶドイツ語と英語の全集において、全貌をつかみ、導入とするために何を読めばよいかと尋ねられると、困惑を覚えるくらいである。入門書としては、全集に入っておらず、フォン=フランツらと共著で書いた『人間と象徴』が挙げられるくらいであろうか。そのなかで全集の第七巻『分析心理学に関する二論文』、とりわけその後半に収録されている「自我と無意識の関係」(一九二八年初版)は、心理療法の過程において自我が無意識から現れてくるイメージとどのような関係を持っていくかを辿っていくことによって、こころの深みをイメージの変遷によって順を追って描き出そうとしており、比較的まとまったものになっている。実際のところ、河合隼雄は『ユング心理学入門』を書く際に、この本をネタ本にしたと告白しているくらいである。  
 ところが長きにわたって非公開であった『赤の書』が二〇〇九年に公刊されるに至って、ユングの著作に関する評価と見方は大きく変化する。…
(「監訳者まえがき/河合俊雄」より)

出版社の書籍ページでは、監訳者によるまえがきを読むことができます。

〇書籍データ

『分析心理学セミナー 1925 - ユング心理学のはじまり』
著:C・G・ユング
編:S・シャムダサーニ、W・マクガイア
監訳:河合俊雄
訳:猪股剛、小木曽由佳、宮澤淳滋、鹿野友章
出版社:創元社(2019年6月10日)
単行本: 273ページ
ISBN-13: 978-4-422-11708-9

創元社 書籍詳細ページ

2019/06/10

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