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佐伯啓思特任教授が監修し、内田由紀子教授と下村智典特定研究員が寄稿した『ひらく①』(エイアンドエフ)が発刊しました

令和という新時代の幕開けとともに、新しい「雑誌」が創刊された。その名は『ひらく』。正確にいえば「雑誌」と称するのはやや語弊があって、年2回という発刊回数では「定期刊行物」(periodical)としては分類されず、「書籍」扱いになるそうだが、いずれにせよ、「新たなる」媒体が春(5月)と秋(11月)に発行されることになった。

この手の「雑誌」にしては派手な装丁で、サイズもかなり大振りである。冊子を開けば、真ん中にドカンと掲載された漫画がまず目に飛び込んでくる。ぱらぱらとページを繰れば、道元の話に建築の話、ソクラテスの話と、なんとも離散的なラインナップで、内容面からしても何の「雑誌」なのかいよいよ分類不能の感を覚える。

ところが、そうした一瞥の印象とは裏腹に、本誌が問うテーマは至って求心的である。すなわち、「西欧文明論」と「日本文化論」を二軸とする「現代文明論」、これである。われわれは、自覚すると否とにかかわらず、現代文明の病ともいうべきニヒリズムの時代を生きている。いや、もはやその病が病であるとさえ自覚しえない末期にまでわれわれは来てしまっているのかもしれない。―本誌に掲載された論考や作品は、こうした危機感に貫かれている。つまり、死に至らんとする現代文明に対する抵抗の企てこそが本誌を束ねる共通の問いなのである。

監修は京都大学名誉教授で本センター特任教授の佐伯啓思先生である。これまで主に書き手として現代文明の危機を問うてこられた先生が、今回初めて、編集主幹という立場から、様々なジャンルの人たちとの対談を企画し、多様な分野の書き手に登場してもらうことに注力されているが、これは本誌の大きな特徴でもある。というのも、現代文明の病という危機に対しては、タコツボ化する学問では到底太刀打ちできず、「総合学」としての「現代文明論」を以ってしなければならぬ、とは先生の確固たる学問的態度であるが、『ひらく』はこれまでにないスケールでそれを叶える場になることが期待されるからである。執筆者や論考の離散的かに見えたラインナップの所以は、ここにあるわけである。

現代文明への内在的批判として展開される「西欧文明論」と、その外在的批判として提示される「日本文化論」。本誌で繰り広げられる議論がとりあえずの成功を見るかどうか、読者の皆さまにしっかりと見定めて頂ければ幸いである。 

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 追記:本創刊号には、佐伯啓思特任教授ご自身の論文及び対談のほか、内田由紀子教授の論文と下村智典特定研究員の書評も掲載されていますので、併せてお知らせいたします。

『ひらく①』(佐伯啓思監修、エイアンドエフ)https://aandf.co.jp/books/detail/hiraku_1

内容 目次

The Interview
笑いと文学、時代と人間。
又吉直樹

特集❶日本文化の根源へ
対談
松岡正剛×佐伯啓思
佐伯啓思 「無常の形而上学」について
末木文美士 日本王権論序説
安藤礼二 近代日本哲学の真の起源
先崎彰容 本居宣長の世紀一
澤村修治 「花」とニヒリズム

特集❷現代という病
鼎談
東 浩紀×先崎彰容×佐伯啓思
柴山桂太 没落の一歩手前で
内田由紀子 日本の協調性の行方
藤本龍児 「ポスト・アメリカニズム」の世紀

特別対談
「ニムロッド」とは何か
第一六○回芥川賞受賞
上田岳弘×佐伯啓思

黒鉄ヒロシ 首斬り 漫伝生死郎
長谷川三千子 道元を読む一
竹山 聖 建築のモダニズムについて、そしてポストモダニズムについて
荒川洋治 現象のなかの作品
佐藤 卓 媒介するデザイン
古田 亮 不染鉄
木多本屋 テレヴィジョンと天皇
金澤洋隆 「善き生」への問い
年表で「読む」日本マンガ史 澤村修治
表紙の画家 大竹彩奈Interview
本好きへの装幀噺 芦澤泰偉
書評 下村智典

 

 

 

2019/08/05

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