2020年第1回こころ研究会でステファノ・カルタ教授が発表を行いました
2020年1月8日、第1回こころ研究会が稲盛財団記念館3階小会議室Ⅰにて開催されました。本年度の京都こころ会議のテーマ「こころと限界状況(仮)」に沿って、ステファノ・カルタ教授(イタリア・カリアリ大学教授/京都大学教育学研究科客員教授)が「関係性、意識、個別化:限界経験としての存在」と題した発表を行いました。
発表では、まず、様々な文脈における「限界(limit)」の概念が考察され、存在が生じるプロセスにおいて、限界とその経験が担っている本質的な役割についての検討が行われました。カルタ教授は、とりわけ「越境的」な限界経験に着目し、心理療法における心理士と患者にとって、相互に浸透しあい互換的であるような関係性が重要であると述べます。また、青年期の癌患者の事例が取り上げられ、極度の限界経験と呼べるトラウマが、必ずしも忌避されるべきものではなく、何らかの意義ある効果を生み出す可能性があると示唆されました。 続くディスカッションでは、様々なトラウマの症例とその心理療法の事例や、限界経験の集団性、究極の限界経験としての死と死生観の文化差、また“limit”や“boundary”といった言葉の差異について、積極的に議論が交わされました。
(報告:中谷森 特定研究員)
2020/02/10