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【令和3年度 一般公募プロジェクト】腸内細菌叢と心理学的傾向の関連についての考察 及び 腸内細菌叢移植による身体症状の変化の改善と心理学的変化についての考察

研究課題      腸内細菌叢と心理学的傾向の関連についての考察 及び 腸内細菌叢移植による身体症状の変化の改善と心理学的変化についての考察

研究代表者     城谷仁美 ルークス芦屋クリニック 臨床心理士

本センター担当教員 河合俊雄 京都大学こころの未来研究センター 教授

連携研究者     城谷昌彦 ルークス芦屋クリニック 院長

 近年腸内細菌のメタゲノム解析技術の進歩に伴い、様々な疾患と腸内細菌叢との関連が注目されるようになってきている。特に脳腸相関の観点から、腸内細菌の種類やバランスによって宿主の心理状態や発達に大きな影響を与えることが様々な研究から示唆されている。当クリニックでは2017年より現在まで約80例の患者が腸内細菌叢のメタゲノム解析を受けているが、腸内細菌叢の特徴と症状、そして心理学的な特徴における関連性を評価する目的で、腸内細菌叢のメタゲノム解析と心理
検査のそれぞれの特徴を分析・検討することを試みる。
 また、当院では難病指定されている潰瘍性大腸炎や膠原病やアトピー性皮膚炎などの患者の中で希望者を対象に、腸内フローラ移植臨床研究会よりドナーの糞便から生成された菌液の提供を受け糞便微生物移植(Fecal Microbiota Transplantation ; FMT、腸内フローラ移植、便移植)を実施している。FMTとは健常なドナーの糞便から採取した微生物を溶存させた液(菌液)を患者の消化管に移植し、疾患の治療を試みる治療法である。2013年にオランダの医療チームが難治性・再発性クロストリジウムディフィシル感染症(CDl)に対して従来の経口バンコマイシン治療群に比しFMT併用群の治癒率が有意に高かったことを受けて注目され、現在米国感染症学会のガイドラインにおいて、再発を繰り返すCDIに対してFMTが強く推奨されている。CDIに対する高い治療効果から、本邦においても現在FMTは潰瘍性大腸炎などの難治性炎症性腸疾患をはじめ、自己免疫疾患や自閉症など多様な疾患に対して臨床研究が行われている。一方、FMTの心理学的な影響を検討した研究は本邦ではほとんど行われておらず、現在までに大学病院において消化器症状を持つ患者を対象に移植前後で質問紙法を用いて抑うつや不安といった感情を比較したものが一つ報告されているのみである。上記の先行研究によると移植後は有意に感情が改善されており、腸内細菌叢の多様性が患者の感情の安定に寄与しているのではないかと報告されている。当院ではFMTを受ける患者に対しその前後で症状の改善や腸内細菌叢バランスの変化といった身体的な指標だけではなく、描画テストや夢などの聞き取りを行なってきた。先行研究と同様に移植を受けた患者から身体疾患の改善だけではなく心理的な変化も報告されているが、本研究は質問紙法に加えて夢や描画などを分析することによって、感情のみならず、より長期的な心の変化に関連すると思われる心の構造的な変化に対するFMTの影響を検討する。

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