【教員提案型連携研究プロジェクト】倫理的観点に基づく認知症介護の負担改善 -認知症における介護者well-being scale開発研究-(『負の感情』領域)
【平成28年度 教員提案型連携研究プロジェクト】倫理的観点に基づく認知症介護の負担改善 -認知症における介護者well-being scale開発研究-(『負の感情』領域)
研究代表者
清家 理 京都大学こころの未来研究センター 特定助教(上廣こころ学研究部門)
共同研究員
鳥羽 研二 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 理事長
鷲見 幸彦 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 副院長
櫻井 孝 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長
武田 章敬 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 地域医療連携部長
センター参画
吉川 左紀子 京都大学こころの未来研究センター 教授
(教員提案型)
日本における認知症罹患率は増加の一途である。数多くのフォーマル・インフォーマルサポートが整備されつつあるが、介護虐待や殺人も増加傾向のままである。認知症をもつ人がその人らしく生きていく権利が脅かされており、ここに倫理的課題がる。認知症の介護の場合、心理・行動症状(以下、BPSD)をはじめとする症状は非常に多様であり、症状を収める明確なケア方法は定められていない。ここに、家族介護者(以下、介護者)のパーソナルストレイン、ロールストレインが錯綜し、バーンアウトや抑うつ状態を誘発しやすくなってしまう。介護者が自分らしく生きていけないという倫理的課題も台頭する。
本研究では、認知症の家族介護者の心身健康保持を図るツール、認知症に特化したwell-being尺度開発を行う。介護者のwell-beingの阻害要因を測定できるツールの開発により、支援介入内容と量の目安を介護者自身が把握可能になることをめざす。
本研究を施行するにあたり、平成27年度までの家族介護者の介護状況転帰調査や家族教室プログラム効果検証研究では、介護ストレッサーを測定するだけでは、介護者の心身の状態を測定するには不足があること、どのような要素を測定すれば、家族介護者の状態をトータルに測定できるのかを検証してきた。その結果、本研究の必要性が示され、本研究で開発する尺度の構成要素抽出を行い、試作化が終了している(平成27年度末時点)。今年度は、試作化された尺度の内的・外的妥当性検証研究を進める。検証された暁には、尺度の応用検証として、得点パターンと支援介入状況を検証し、尺度活用の支援マニュアルを作成する。
本研究の成果を以て、①介護当事者の声が反映されること、かつ、②認知症医療・看護・介護状況を的確に把握でき、支援・介入の指標が提示されること、③支援・介入した効果を測定できること、以上三点の効果が挙げられる。これらの効果は、社会資源の公平分配につながる倫理的活用の指標にもなり、政策提言の一助になりうると考える。
2016/04/21