【令和元年度 実践活動】子どもの発達障害へのプレイセラピー
研究課題 子どもの発達障害へのプレイセラピー
研究代表者 河合俊雄 京都大学こころの未来研究センター 教授
連携研究員 十一元三 京都大学医学研究科 教授
田中康裕 京都大学大学院教育学研究科 准教授
黒川嘉子 奈良女子大学研究院生活環境科学系 准教授
長谷川千紘 島根大学人間科学部 講師
梅村高太郎 京都大学大学院教育学研究科 講師
長谷川藍 奈良大学学生相談室 カウンセラー
皆本麻実 京都大学大学院文学研究科 相談室相談員
田附紘平 名古屋大学大学院教育発達科学研究科 准教授
松波美里 三重県総合教育センター 臨床心理相談専門員
鈴木優佳 京都大学大学院教育学研究科 特定助教
西 珠美 社会医療法人かりゆし会 ハートライフクリニック 臨床心理士
山﨑基嗣 京都大学大学院教育学研究科 附属臨床教育実践研究センター 特定助教
共同研究員 大場有希子 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
松岡利規 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
豊原響子 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
文山知紗 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
長谷雄太 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
水野鮎子 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
平子侑里絵 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
山下環奈 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
嶋見優希 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
松本知香 京都大学大学院教育学研究科 大学院生
センター参画 畑中千紘 京都大学こころの未来研究センター特定講師
粉川尚枝 京都大学こころの未来研究センター特定研究員
現在，発達障害は，脳の中枢神経系の異常による，器質的・生得的な認知発達の障害と考えられ，援助には訓練・療育的対応や，薬物療法からのアプローチが中心になっている。こうした援助に対し，プレイセラピーによるアプローチは，発達を促進させることに目標をしぼるわけではなく，子どもの自発的で自由な遊びを中心に，セラピストとの関わりを通じて，内面の形成や自己の確立といった，子どもの心理的な成長が目指されるものである。個別の事例検討からは，発達障害への心理療法・プレイセラピーなどの意義も多く報告されてきたため，本研究プロジェクトでは，発達障害への心理療法の有効性を，実証的に検討することを目的として研究を行ってきた。
当センターでは発達障害に対する心理療法について検討すべく，「発達障害への心理療法的アプローチ」プロジェクトを立ち上げて，H20年～H22年の3年間は，主に事例検討会を重ねてきた。発達障害の中心となる特徴として「主体性の欠如」を捉え，それに対して「主体性の発生」に立ち会う心理療法が有効であることを確かめてきた。
この活動と得られた知見を基に，平成23年～は発達障害の子どもを対象にプレイセラピーを6ヶ月実施し，発達指数の変化から心理療法の効果を実証的に検討するとともに，発達障害と診断される子どもの家族関係にも着目し，親面接の意義についても検討を行ってきた。また，近年，発達障害の診断や疑いを受けながらも，発達障害の診断の範疇とは見立てられない事例が増加しており，診断の範疇に含まれない，問題が比較的軽度とみられる子どもの事例も対象に含めて検討し，子どもたちの特徴やプレイセラピーにおけるポイントを明らかにしてきた。また，発達障害児へのセラピーのポイントは，子どものプレイセラピー全般とも通じるのではないかと考え，現在プロジェクトでは，子どものプレイセラピー全般を視野に，実証研究・治療機序の検討を積み重ねていくことも，目的として考えている。
本プロジェクトは，医学研究科・十一元三教授と連携し，神経生理学的視点と心理学的視点を恊働させ，発達障害の子どもへのプレイセラピーの方法論を確立し，その効果を実証的に明らかにする調査研究を進めていく。そして，実践に基づきながら，これまで不足していた定量的知見を提示することで，より広範囲に心理療法の意義を発信し，発達障害への援助体制の確立に貢献することを目的とする。