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【平成30年度 研究プロジェクト】現代社会における〈毒〉の重要性

研究課題
現代社会における〈毒〉の重要性

研究代表者
吉岡 洋 京都大学こころの未来研究センター 特任教授

連携研究員
加藤有希子 埼玉大学・准教授
小澤京子 和洋女子大学・准教授
大久保美紀 パリ第8大学・講師

 近代社会においては、身体や生命にとって善か悪かという二項対立的な思考様式が支配的であったが、例えば古代ギリシアには〈薬〉と〈毒〉の両方を同時に意味する〈ファルマコン〉という概念が存在していた。こうした両義性の思考は、近代社会が陥っている諸問題――経済発展至上主義、やみくもな効率・合理性の追求と、その中における生の意味の喪失――から抜け出すために重要なヒントとなると考えられるが、過去の時代の概念をただ回顧するだけでは不十分である。
 本研究においては〈毒〉をその両義性においてとらえる〈ファルマコン〉のような概念が、現代の社会的な文脈の中でどのような意味と可能性を持っているかを、哲学や美術史、ファッション論や文化人類学の立場から考察して印刷物としてまとめるとともに、芸術的な表現を通じて社会的にも発信しようとするものである。〈毒〉という概念を手がかりに、身体や生命、医療や健康をめぐって、近代的な二項対立に束縛されないより柔軟な思考方法を提示し、議論ならびに芸術的体験を通じてそれを共有するという効果が期待される。

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