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第3回京都こころ会議シンポジウム「こころと生き方―自己とは何か」を開催しました

2018年11月18日、京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホールにて、第3回京都こころ会議シンポジウムを開催いたしました。公益財団法人稲盛財団からのご支援を受けて2015年に発足した京都こころ会議は、これまでに「こころと歴史性」(第1回シンポジウム)、「こころの内と外」(第2回シンポジウム)、「こころと共生」(第1回国際シンポジウム)をテーマに、計3回のシンポジウムを行ってまいりました。

今回の第3回シンポジウムは、「こころと生き方―自己とは何か」をテーマといたしました。これまで3回のテーマが、どちらかというとこころの広がりに焦点を当ててきたのに対して、今回はこころの内面性や固有性に迫ろうとするもので、三名の講演者によって、社会や集団とのつながり、さらには自然科学の知見を含めた検討が試みられました。

河合俊雄センター長の開会の言葉のあと、下記のような3つの講演が行われました。

まず村山美穂教授から(京都大学野生動物研究センター・センター長)は、「社会で生きる、こころの分子基盤」と題した講演が行われました。動物の行動や性格には環境と遺伝子など多くの要因が関わりますが、そのなかから遺伝子の影響に焦点を当て、遺伝子を解析することによって品種間・個体間の比較を行う研究が紹介されました。講演では、不安の感じやすさ、新奇性を追求する程度、攻撃性、幸福感などの様々な動物の性格や行動と、遺伝子との関連が示された研究結果が示され、遺伝子が動物の社会行動を考察する際の新たな指標となる可能性が論じられました。そして、個体の行動と遺伝子の関連を明らかにすることは、遺伝子情報を活かした飼育管理や、麻薬探知犬などの能率的な選択や訓練にも繋がるのではないかとの提言が行われました。

続いて、内田由紀子准教授(京都大学こころの未来研究センター)が「日本社会における生き方と自己:組織従業者の生理・心理調査からの考察」と題して講演を行いました。内田准教授は、文化心理学の知見や自己の文化多様性の視点から、日本において自己意識を形成する2つの要素として“協調性”と“独立性”を提示し、それぞれが人の健康や幸福とどのように関連するかについて論じました。日本の企業調査、日本の中の地域比較の研究においては、主観的な幸福感を高めるのは“独立性”であり、流されない意志決定や公平で公正な競争が重要であることが示されました。一方、生理的指標を用いて検討してみると、健康に影響を与えるのは“協調性”であることが明らかとなり、日本社会においては“協調性”がある種のインフラとしての意義を持つ可能性を示しました。

3つめの講演として、出口康夫教授(京都大学大学院文学研究科)が「「われわれ」としての自己、「われわれ」としての生き方」と題した講演を行いました。出口先生は、西洋近代社会を支えてきた「個人主義的自己」観に対抗するものとして、「東アジアの全体論的自己」観をあげ、これを「「われわれ」としての自己」観として提案しました。「「われわれ」としての自己」観では、社会などのシステム全体が「自己」とみなされ、「私」は「「われわれ」としての自己」の一要素と捉えられます。講演では、この「「われわれ」としての自己」観への移行が、「私」の持つ倫理的責任や孤独感を変化させる可能性に言及し、社会システムの修正、そして我々の生き方の多様化にも繋がるのではないかと論じられました。

これらの講演に続き、河合俊雄教授を司会に加え、講演者らによる総合討論が行われました。ここでは「こころと生き方―自己とは何か」という全体テーマの下、3つの講演を踏まえて、人間や動物の協調行動の持つ意味、自己と身体の関係、日本的な共同体のあり方などについて、それぞれの専門領域を超えた議論が展開されました。

最後に、湊長博京都大学プロボストが閉会の言葉として、総合討論でも話題となった自己と身体性の議論に関して、自身の専門領域である免疫学の立場からコメントされました。そして、これまでのこころ会議の開催も振り返りながら、京都大学の人文学を世界に向けて今後どのように発信していくかを考えていくことの重要性について提言されました。当日の司会進行は吉岡洋教授が務め、200名近い参加者にご来場いただきました。

第3回京都こころ会議シンポジウムの講演内容は、近く当HPでも動画配信を行う予定です。

<報告:粉川尚枝研究員>

河合俊雄センター長

村山美穂センター長

内田由紀子准教授

出口康夫教授

シンポジウム全景

吉岡洋教授

総合討論

湊長博京都大学プロボスト

[開催ポスター]

[DATA]

▽ 日時:2018年11月18日(日)13:30~17:40(13:00~受付開始)

▽ 会場:京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホール(京都市左京区吉田本町)

▽ プログラム:

13:30~13:40  開会の言葉 河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター・センター長)

13:40~14:30  講演1 『社会で生きる、こころの分子基盤』村山美穂(京都大学野生動物研究センター・センター長)

14:30~15:20  講演2 『日本社会における生き方と自己:組織従業者の生理・心理調査からの考察』内田由紀子(京都大学こころの未来研究センター・准教授)

15:20~15:40  休憩

15:40~16:30  講演3 『「われわれ」としての自己、「われわれ」としての生き方』出口康夫(京都大学大学院文学研究科・教授)

16:30~17:30  総合討論 村山美穂、内田由紀子、出口康夫、河合俊雄

17:30~17:40  閉会の言葉 湊長博(京都大学・プロボスト)

主催:京都大学こころの未来研究センター

後援:公益財団法人 稲盛財団

 

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