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上廣倫理財団寄付研究部門 2018年度研究報告会
「超高齢社会をよりよく生きる術」を開催しました

 2019年1月13日、京都大学こころの未来研究センター上廣倫理財団寄付研究部門 2018年度研究報告会「超高齢社会をよりよく生きる術」を、稲盛財団記念館大会議室にて開催しました。

 2012年4月に創設した本研究部門は、公益財団法人上廣倫理財団の支援のもと、公共政策、医療福祉、臨床心理学、伝統知、哲学など多様な専門領域の研究者が多種多様なアプローチで「こころと倫理」に関わる学術研究を行っています。2018年度の研究報告会では、研究者による研究報告と共に「超高齢社会をよりよく生きる術」をテーマに実践家と研究者の討論を行いました。

 まず、開催の挨拶で、河合俊雄センター長が「上廣倫理財団寄付研究部門は、いろいろな研究をしているので、テーマを絞り込むのは難しいですが、“超高齢社会”は今、ホットな話題で、今回のように社会とのつながりを大切にしたパネルディスカッションを行うことは、実り豊かなものになると期待しています。またこれらの研究は、上廣倫理財団のご支援で成り立っています。これに深く感謝の意を表します」と話しました。

 続く、来賓ご挨拶では、公益財団法人上廣倫理財団の丸山登事務局長が、センターとの出会いとこれまでの経緯をお話しされ、「こころの未来研究センターの実験、調査、実践、文献に基づく研究活動を見守り、寄り添い、やがて現代における新しい意味での京都学派としての存在と働きをされるようになられることを辛抱強くお待ちしたいと思っています。これからもセンターを末永くご支援をさせていただきたいと願っています」とのお言葉を頂戴しました。


河合俊雄センター長

丸山登事務局長


 プログラム前半の上廣倫理財団寄付研究部門の取組紹介では、広井良典教授が、この部門の基本的なミッションを示しました。本部門は日本人の精神性と倫理観を基盤とし、こころと倫理という視点で探究することで、ポスト成長時代における現代社会の倫理を再構築とすることであり、学術研究と並んで、社会還元・発信、社会へのフィードバックを重視しているのも特徴であると説明しました。

 続くリレー研究報告では、4つのプロジェクトに関して上廣倫理財団寄付部門の5人の研究者がそれぞれの研究活動を報告しました。
プロジェクト1・公共政策・思想領域「ポスト成長時代の経済、倫理、幸福」については、広井良典教授が、GDPに代わる豊かさの指標として、国内の様々な自治体が、地域の豊かさや幸福度に関する指標をつくり、それを政策へフィードバックする活動が活発化している具体例をいくつか紹介しました。幸福は多様なもので1つの尺度では測れないが、幸福は多重層構造で、基盤や基礎条件を整えていくためにも、今後も様々な自治体等での政策展開への助言や連携を進めていくと話しました。

 また同プロジェクトで、松葉ひろ美連携研究員が「日本の福祉思想と生命観」研究について、日本の福祉問題において、財政的な困難を抱えるなかで、哲学的・思想的な試みが行われてこなかったことに触れつつ、日本の近代化の中で生じた社会事業家たちの思想をいくつか例に挙げ、「生命」を原理とする福祉思想の可能性について考察しました。


広井良典教授

松葉ひろ美連携研究員


 プロジェクト2・伝統知・倫理思想領域「アジアと日本の精神性、幸福観、倫理観」については、熊谷誠慈特定准教授が、今年度の研究成果として「インド仏教のこころ観」がどのように発展してきたのか、「ブータン国教の開祖研究」として開祖の生誕地を発見する等、ブータンのルーツを探る研究についての紹介をしました。また研究と同時に市民講座等の社会還元を行い、市民のみなさまからも関心を持ってもらえるような研究を進めたいと話しました。

 プロジェクト3・医療・保健・福祉領域「超高齢社会における、現代日本の医療・保健・福祉にかかる倫理」については、清家理特定講師が、超高齢社会における倫理的課題の具体例を挙げ、これに関して、当事者や関係する人の こころ からだ くらしにおける生きづらさの軽減を目指すために行っているアクションリサーチについて報告しました。


熊谷誠慈特定准教授

清家理特定講師


 プロジェクト4・臨床心理学領域「ポスト成長時代のこころの問題と変容」については、畑中千紘特定講師が、悩みや問題をかかえた人の話を聞きながら寄り添っていくカウンセリングや心理療法等の臨床現場から出てくる問い、「今の社会を生きていく上で、私たちにとって何が課題になっているのか?」「今の人たちのこころはどうなっているのか?」を通して、学術研究を進め社会へ還元していく研究活動について、具体例(現代の若者の心理分析や自治体との連携)を挙げながら報告しました。

畑中千紘特定講師

報告会 会場の様子


 プログラム後半のパネルディスカッションでは研究者と実践者4名のパネリストがそれぞれ話題提供を行いました。
 概要は以下の通りです。

 話題提供① 「超高齢社会への新たな展望-90年代~現在そして未来」
 広井 良典教授が、1990年代に高齢化率世界一になった日本が抱える高齢者医療・福祉に関する議論への疑問や、高齢者ケアへの心理学的アプローチの不足を説明しつつ、“老・壮・青”の関係性の再構築について考察しました。またドイツの高齢者が自然にカフェや市場などでゆっくり過ごす様子と日本の高齢者の現状を比較しながら、超高齢社会は個人の問題でもあるが、街や社会の在り方をかえる発想の転換が必要であると述べ、高齢化をチャンスとして高度成長期とは異なる新たな「豊かさ」のモデルを構想していくべき時期と話しました。

 話題提供②「学びあいから生まれる支えあいの可能性 -認知症を例に」
 清家 理特定講師が、認知症に関わる社会的課題の解決をめざしたアクションリサーチについて、現在実施中の認知症当事者、認知症家族介護者、認知症地域支援推進員への支援実態や効果をデータで示しながら紹介しました。これらのアクションリサーチを通じ、超高齢社会をよりよく生きる術として、お互いさまのつながり(互助)が大切で、そのつながりを創る仕掛けとして、お互いの経験や思いを共有する学びあいの場の創出が重要だと説明しました。

 話題提供③「高齢化率45% 豊田市旭地区での取り組み」
 豊田市社会福祉協議会旭支所の高橋里美係長が、高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)45%の旭地区では、老人福祉センターと地域住民とのパイプ役を担う福祉特派員制度が平成27年に創設され、現在は地区人口の1割が、福祉特派員として登録し、活動・活躍している様子について具体例を挙げて紹介しました。

 話題提供④「これからの医療・ケアに関する話し合い(アドバンス・ケア・プランニング)の普及啓発」
 京都府健康福祉部高齢者支援課 吉田 万里子 地域包括ケア担当課長が、「どこで、誰に看取られ、どのような最期を迎えたいのか」という人生の最終章の希望を実現できる社会基盤の構築のため、京都地域包括ケア推進機構に設置された「看取り対策プロジェクト」の取り組みについて具体例を挙げて紹介し、自ら学び、考え、家族や大切な人と話し合い、必要に応じて専門家に相談しながら、最後まで自分らしく生きるために元気な時からアクションをすることが必要であると話しました。


高橋里美係長

吉田万里子課長


 休憩をはさんで最後の全体討論では、指定討論者に東京大学高齢社会総合研究機構の秋山 弘子特任教授をお迎えし、パネリストとの討論を行いました。さらに「核家族化やコミュニティの分断が進む中で、高齢者の生きがいや役割を醸成するにはどんな社会を目指したらいいのか?」「初期認知症を把握するのは難しいと感じているが、家族交流会、当事者の交流会をするために工夫すべきことは?」「ACP(=アドバンス・ケア・プランニング)について、認知症が進んでいる人で、配偶者など家族がいない人はどのようにしたらいいのか?」など、会場からの質疑についてパネリストが答えました。

 締めくくりに、秋山特任教授から、「高齢社会・長寿社会の課題については、理解し、議論されているので、これからは、高齢社会・長寿社会の新しい可能性について追求すべきではないか。また高度成長期と違い、これからの豊かさは“こころの豊かさ”で、今後はこころの課題に焦点をあてるべきだ。研究者だけでなく、生活者と一緒に考えていくことが大切になる。」とのご意見をいただきました。

秋山弘子特任教授

パネルディスカッションの様子


 最後は、司会進行を務めた上廣倫理財団寄付研究部門長の熊谷特定准教授が「研究者だけのコミュニティでなく、市民の皆さまとの情報交換、意見交換をおこなっていく形で今後も研究活動を進めていきます。」と挨拶し、2018年度の報告会を終了しました。


○参加者の感想(アンケートから抜粋)
・義母が、認知症になり、入院しているので、今日のお話はとても有益でした。自分自身のこととしても考えていかねばならないと思っています。
・複数の領域について幅広く説明を聞くことができたので、上廣倫理財団寄付研究部門が全体としてどのような研究を行っているか概括的に理解できたのが有意義であった。特に広井先生の老年期を社会にとって創造的な役割を果たす時期と捉える指摘について、印象的で今後の研究の行方について深く関心をもった。
・パネルディスカッションの全体会議が興味深かった。秋山先生の指定討論がすばらしく、それに対する回答を聞きつつ、今日の報告会のテーマがより深く理解できた。
・高齢化社会には不安や心配が多く、社会的な取り組みや現状について知る機会が欲しかったので、とても良い報告会であったと思います。エビデンスに基づいた研究に頼もしさを感じた。
・私は医療、福祉の分野で働いていますが、いろんな専門分野から高齢社会の生き方について考えていく必要があると改めて思いました。すべてのことはつながっていると思います。



[DATA]
▽日時:2019年1月13日(日) 14:30-17:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽参加費:無料
▽プログラム
14:30-14:35 センター長挨拶 河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター 教授・センター長)
14:35-14:40 来賓ご挨拶 丸山登(公益財団法人上廣倫理財団・事務局長)
14:40-14:50 上廣倫理財団寄付研究部門の取組紹介 広井良典(京都大学こころの未来研究センター 教授・副センター長・上廣倫理財団寄付研究部門兼任)
14:50-15:10 リレー研究報告
広井良典
熊谷誠慈(上廣倫理財団寄付研究部門長・特定准教授)
畑中千紘(上廣倫理財団寄付研究部門・特定講師)
清家 理(上廣倫理財団寄付研究部門・特定講師)
松葉ひろ美(上廣倫理財団寄付研究部門・連携研究員)

15:10-17:30 パネルディスカッション
イントロダクション
話題提供①「超高齢社会への新たな展望」広井良典
話題提供②「学びあいから生まれる支えあいの可能性-認知症を例に」清家理
話題提供③「高齢化率45%豊田市旭地区での取り組み」
高橋里美(豊田市社会福祉協議会旭支局 係長)
話題提供④「これからの医療・ケアに関する話し合い(アドバンス・ケア・プランニング)の普及啓発」
吉田万里子(京都府健康福祉部高齢者支援課 地域包括ケア担当課長)
全体討論
指定討論者 秋山弘子(東京大学高齢社会総合研究機構・特任教授)
17:30 閉会
▽参加者数: 118名

2019/02/01

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