文化と幸福感:社会的適応からのアプローチ (『現代の生き方』領域)
研究代表者
内田由紀子 京都大学こころの未来研究センター 准教授
連携研究員
Vinai Norasakkunkit ミネソタ州立大学・准教授
近藤恵 天理医療大学設立準備室・助教
(教員提案型)
日本文化は関係志向的、もしくは相互協調的であり、人々が「関係性」を重視していることが示されてきている。しかしその一方で、近年の日本においては、「ひきこもり」など、不適応感や対人関係の難しさとコミュニケーションの不全が取り上げられることも多くなってきている。
本研究では若者の幸福感と不幸せ感を検討し、心の健康と文化・社会的適応に関連する諸分野への貢献を目指す。さらに、日本文化の中で中心的に見られる現象だけではなく、一般的傾向とは異なる行動様式や価値基準を持つ若者たち(特にニート・ひきこもり・フリーター傾向の強い若者)を対象に調査を行うことで、若者の心の変化を検証する。従来の社会心理学・文化心理学は、集団内の「中心的傾向」を対象とし、文化内の分散はあまり考慮に入れられなかった。それゆえに、個々の文化の中で生じる適応・不適応がどのような形で表れるのか、またそのような文化の中心にはいない人たちの心理傾向については明らかにされていない。本研究では、適応感や不適応感を導く文化内の分散・個人差を考慮に入れた実証データの提示を試みることにより、より多層的な幸福感の有り様を明らかにする。さらに昨年度までのプロジェクト「青年期の社会的適応:ひきこもり・ニートの文化心理学的検討」を継承し、実際に社会で起こっている様々な心の問題へのアプローチを視野に入れる。
2011/06/23