自己感情の制御と他者感情の認知の神経機構 (『負の感情』領域)
研究代表者
船橋新太郎 京都大学こころの未来研究センター 教授
連携研究員
藤田和生 京都大学・教授 比較認知科学・理学博士
福山秀直 京都大学・教授 認知神経科学・医学博士
共同研究員
竹林美佳 京都大学・大学院生 神経科学・修士(人間・環境学)
センター参画
吉川左紀子 京都大学こころの未来研究センター 教授
(教員提案型)
脳の働きとして様々なものを挙げることができるが、人のこころの動きと最も密接に関連しているのが感情である。感情の制御や認知に関わる脳部位として、前頭連合野腹内側部が知られている。前頭連合野腹内側部は、扁桃体や帯状回から入力を受け、また、前頭連合野外側部とも緊密な機能的関係を持つことから、人の「こころ」の最も重要な部分に関わる脳部位であると考えられている。この部位の損傷により、乏しい感情表現、極端な感情の変化、自己感情の制御の欠如、共感や同情の欠如、社会性や倫理観の欠如などが生じる。この部位は自己の感情の表現や制御と同時に、他者の感情の認知にも関わることが知られている。他者の行為の目的や意味の理解に関わるシステムが運動関連領域で発見され、このシステムをミラーシステムと呼んでいる。感情の表現や制御に関わる脳部位が感情に関わるミラーシステムとして機能することにより、他者の感情や感情の動きを認知することができると仮定すると、共感や同情などの神経基盤を説明できるのではないかと考えられる。そこで、自己の感情を表現する仕組み、自己の感情を制御する仕組みを前頭連合野腹内側部で明らかにすると同時に、この仕組みが同時に他者の感情の理解にも貢献しているかどうかの検討を行う。感情の表現や制御に関わる前頭連合野腹内側部の神経システムの働きをもとに、「こころ」の表現としての感情の神経基盤を明らかにする。
2011/06/23