1. top
  2. ニュース
  3. 上廣倫理財団寄附研究部門2019年度研究報告会「SNS時代のこころ」を開催しました。

上廣倫理財団寄附研究部門2019年度研究報告会「SNS時代のこころ」を開催しました。

2019年12月15日(日)、京都大学こころの未来研究センター上廣倫理財団寄附研究部門2019年度研究報告会が開催されました。

今回の全体テーマは「SNS時代のこころ」です。
多くの人が当たり前にソーシャルネットワークサービス(SNS)を使うようになっている現代社会において、こころがどのように変化してきているのかについて、様々な角度から考えを深めてみようとする試みでした。12月にしてはあたたかい日曜日になったこともあってか、定員を上回る人数の方が会場に集まり、最後まで熱心に耳を傾けてくださっていました。

フロアの様子

報告会は、センター長河合俊雄の挨拶から始まり、続いて公益財団法人上廣倫理財団事業部部長 小原伸一さまよりご挨拶をいただきました。

本部門の今年度の取り組み紹介・研究報告として、広井良典教授、熊谷誠慈特定准教授、清家理特定講師の順で報告を行いました。

広井教授は「韓国・幸福実現地方政府協議会創立1周年記念シンポジウムでの講演」などの社会還元活動についてレポートすると共に、持続可能性や幸福へと関心が移りつつあるポスト成長時代において「経済と倫理」の分離と再融合をキーワードとしてあげ、研究の展開についても報告しました。

清家特定講師は、超高齢社会の課題および課題解決手法の探索や介入によるエビデンス表出(研究)、そしてエビデンスに基づく啓発活動や政策提言(社会還元)の実施を連関させて行うアクションリサーチのうち、看取りの文化醸成のための啓発手法開発、認知症の人と家族に対する効果的なストレスマネジメント手法開発について、政策動向、ニーズ調査や無作為割付試験の結果を示しました。そして、調査結果を踏まえた今後の研究展望を紹介しました。

熊谷特定准教授は、ブータンと日本との皇室外交の補助などについての国際貢献について報告すると共に、仏教とボン教(ヒマラヤの土着宗教)のこころ観についての比較思想史研究や、ブータンの国民総幸福(GNH)政策の歴史学的・哲学的研究など、アジアの精神性、幸福、倫理に関する研究成果を報告しました。

後半はパネルディスカッション「LINE相談からみた現代の意識」として3名の話題提供の後に、モデレーターに河合俊雄教授、コメンテーターに島根大学人間科学部・教授の岩宮恵子先生を加えたディスカッションが行われました。

まず、上廣部門の畑中千紘特定講師より「現代の意識とSNS時代のこころ」として話題提供が行われました。
LINE相談がどうしてこれほどまでにすぐに私たちのこころに浸透し得たのかについてデータや臨床例から、いくつかの視点が提供されましたが、SNS上にすぐに今の状況や気分を吐き出すような様子からは一見、こころがばらばらになっているように思えるかもしれないが実はSNSはこころの「外側」ではなくなっており、すでにこころの内と外がシームレスになってきているのではないかという視点が提案されその後の議論でも活発に話し合われました。

次に、LINEカウンセリングの立ち上げの時期から多くの現場にアカデミックアドバイザーなどの立場からかかわって来られた杉原保史教授(京都大学学生総合支援センター・センター長/教授)から「LINE相談事業の概要」についての話題提供がありました。この中では、LINE相談事業がはじめられた経緯や、当初の苦労と実態などが話されましたが、特にLINEを通した対話の中でどのように相談者のこころが動いていくのか仮想事例を通して示されたのが印象的でした。

3つめの話題提供として、京都大学こころの未来研究センター 中山正孝特定助教から「LINE相談事業のデータ分析」として、匿名化済の1000を超える事例データの分析から見えてきたものについて示されました。

臨床心理学領域ではこれまで、事例研究が主たる方法論となっていて、なかなかその内容を含めた研究が社会に見えにくい形となっていましたが、LINE相談のようにビッグデータを扱える形式が出てきたことによって、認知科学的視点から、匿名性を担保した形でより深い分析ができる可能性が開かれてきたことが感じられました。

3名の話題提供者に河合教授、岩宮教授を加えたメンバーで行われたディスカッションでは、LINEカウンセリングは、軽い雰囲気になってしまうのではないかと思われがちだが若者世代を含めて、実はきちんと話ができる相談者が多いことがあげられ、LINEという通路の特徴と、限定された相談枠であることが今の人のこころにフィットしている可能性があることに言及されました。

ディスカッション

また、SNS時代を迎えた我々のこころがどうなってきているのかについて、「生きる力が弱くなっているのでは?」という会場からの疑問に対して深層に入っていくと実はこころはあまり変わっていないのかもしれないが表面的にそれが見えにくくなっているのかもしれないという議論をはじめ、SNSと現代の意識、実証研究と臨床実践の融合などについてなど、さまざまな議論がなされました。

 

[DATA]
上廣倫理財団寄附研究部門2019年度研究報告会「SNS時代のこころ」
▽日時:2019年12月15日(日)14:30 ~ 17:30
▽会場:京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室
▽対象:研究者、学生、一般
▽参加者数:113名

2019/12/25

これまでのニュース
年別リスト

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

PAGE TOP