1. top
  2. ニュース
  3. セミナー・研究会
  4. 上廣倫理財団寄付研究部門2020年度研究報告会「仏教から考えるコロナ時代の生き方」を開催しました:2020年12月6日(日)

上廣倫理財団寄付研究部門2020年度研究報告会「仏教から考えるコロナ時代の生き方」を開催しました:2020年12月6日(日)

2020年12月6日(日)、京都大学こころの未来研究センター上廣倫理財団寄付研究部門2020年度研究報告会が開催されました。

今回の全体テーマは「仏教から考えるコロナ時代の生き方」です。
令和2年にわが国を直撃した新型コロナウイルスは,世界中に蔓延し、大きな混乱をもたらしました。ソーシャルディスタンスが推奨され,オンライン化が進み、社会システムが大きく変わりつつあります。ウィズコロナ、さらにはポストコロナの時代をどう生きていくべきか,様々な分野の専門家が知恵を出し合っていく必要があります。本報告会では、インド古典文献や仏教文献の記述に着目しつつ、コロナ時代の生き方について学際的な議論を行いました。初となるオンライン形式での開催ということで、多数の参加がありました。

報告会は、河合俊雄センター長の挨拶から始まり、続いて公益財団法人上廣倫理財団専務理事・事務局長 丸山登さまよりご挨拶をいただきました。

本部門の今年度の取り組み紹介・研究報告として、広井良典教授、清家理特定講師、畑中千紘特定講師の順で報告を行いました。

広井教授は幸福度指標に関する岩手県庁や福井県での展開への関与などの社会還元活動について紹介するとともに、「福祉思想の再構築」とのテーマのもと、日本における福祉思想の歴史的展開を「福祉思想の形骸化」「福祉思想の空洞化」といった流れにそくして振り返りつつ、自然との関わりを再評価する新たな福祉思想の構築の必要性について報告しました。

清家特定講師(医療・保健・福祉領域)は、「超高齢社会における、現代日本の医療・保健・福祉にかかる倫理プロジェクトの中から、「認知症の人や家族の方々に対するストレスマネジメントに焦点化した研究」を取り上げ、認知症の人と家族のペアを対象とした心理社会的教育支援の試行的プログラムの効果検証、オンライン家族介護者支援にかかるニーズ調査結果を紹介しました。

畑中千紘特定講師(臨床心理学領域)は、「ポスト成長時代におけるこころの問題と変容」プロジェクトの中から、SNSカウンセリングに関わる今年度の活動について取り上げ、そうした中で見えてきたコロナ禍での人々のこころの反応の多様性や、閉塞的な社会状況の中でもポジティヴな変化を志向していく人のこころの強さについての調査結果を示しました。

後半はパネルディスカッション「仏教から考えるコロナ時代の生き方」として、モデレーターの熊谷誠慈准教授(上廣倫理財団寄付研究部門長)のイントロダクションに続き、手嶋英貴(京都文教大学総合社会学部・教授)と菊谷竜太(京都大学白眉センター・特定准教授)の話題提供の後に、指定討論者に広井良典教授と亀山隆彦研究員(こころの未来研究センター)を加えたディスカッションが行われました。

 

まず、上廣部門の熊谷准教授が、「仏教にみるコロナ時代の生き方」と題するイントロダクションを行いました。熊谷准教授は、①「疫病」、②「時代の転換点」、③「日本」という3つの議論の視点を設定しました。加えて、日本の仏教が存続するためには、社会課題に対しっかりと向き合って、世間と同じ目線で仏教教義に基づいたレスポンスを出し続けること、もう一つは、最先端科学と融合することだという提言を発しました。

次に、手嶋英貴先生により「時代の転換期:インドの循環的宇宙論を中心に」と題する話題提供が行われました。手嶋先生は、マクロな視点から、「時代の転換期」をテーマにして、マヌ法典や仏典などで示される循環的宇宙論(昼夜のように明暗を長期スパンで繰り返すイメージ)を紹介し、インドの宇宙論に基づき以下の考察を提示しました。
・世の中の事象は「人の営み」の結果であり、人の行動を変えることで事態を回復させることが可能。
・ただし現実には、政治の在り方や、社会全体の趨勢が、人の行動に大きな影響力を及ぼす。
・したがって、人の行動はなかなか変わらない。一定の「極」に達したところで、はじめて抜本的に自己変革できる。

続く菊谷竜太先生は、「疫病とブッダーインド仏教における防護聖典と呪文効能定型句」と題する話題提供を行い、物語と図像を通じて、みえざる脅威としての疫病をそのように可視化し対処してきたのか、その過程を探りました。
古代のインドでは、鬼霊たちが疫病をもたらしており、人々の動きに合わせて鬼霊たちが移動することで、疫病が拡大すると考えていました。鬼霊は一般に不可視で空中をただよい、変幻自在にして微細で人体に潜むため、一種のエアロゾル(瘴気)状のものとして捉えられていました。そして、正しき知をそなえた人間の善なる行いのなかに神仏はすがたを顕現させ、幸福がもたらされると考えられていました。このインド的な悪霊論からコロナ禍を再考した場合、いにしえと同じく、正しき知をそなえた人間の善なる行いのなかに、解決の手口があるのではないかとの提言を出されました。

ディスカッション

2名の話題提供者に広井教授、亀山研究員を加えたメンバーで行われたディスカッションでは、仏教をより広い人類史からとらえ直したうえでの議論が行われました。また、現在の日本の仏教教団の抱える課題についても議論がなされ、社会課題に対して、(個人的な想いだけではなく)仏教教理にもとづいた形での公式回答を積極的に発信していくなどの提言が出されました。

菊谷竜太特定准教授・亀山隆彦研究員・手嶋英貴教授・熊谷誠慈准教授・広井良典教授

[DATA]

上廣倫理財団寄付研究部門2020年度研究報告会「仏教から考えるコロナ時代の生き方」

▽日時:2020年12月6日(日)14:30 ~ 17:30
▽会場:ZOOMウェビナー
▽対象:研究者、学生、一般
▽参加者数:144名

【関連URL】
こころの未来研究センター 上廣倫理財団寄付研究部門
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/uehiro2/

2021/02/02

これまでのニュース
年別リスト

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

PAGE TOP