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鎌田教授の報告文が『災害と文明ー東日本大震災と防潮堤問題を考えるー報告書』に掲載されました

 比較文明学会が2013年9月に開催したシンポジウム『災害と文明ー東日本大震災と防潮堤問題を考えるー』の報告書に、鎌田東二教授の報告文が掲載されました。


 東日本大震災の被災地では、復旧・復興過程において海岸線に巨大な防潮堤が建設されることが決まり、すでに着工されています。比較文明学会では、この「防潮堤問題」について中長期的に検討し、文明の未来を構想する手がかりを探るためのプロジェクトを立ち上げ、第一回のシンポジウムをおこないました。鎌田教授は、シンポジウムの報告書に「生態智を宿す聖地文化と文明の欲望に孕むコンクリート巨大防潮堤」というタイトルにて追加報告文を寄稿。巨大防潮堤について、日本に古くから息づく「自然に対する深く慎ましい畏怖・畏敬の念に基づく、暮らしの中での鋭敏な観察と経験によって練り上げられた、自然と人工との持続可能な創造的バランス維持システムの知恵と技法」を宿す聖地文化の構造と機能を無視する施策として、強く非難すると共に、「自然災害が頻発する時代に『生態智』を宿す聖地文化を活かすことのできる緑の文明の構築を未来に向かって強く建設していくべきである」と提案しています。


1407kamata_hikakubunmei.png「生態智を宿す聖地文化と文明の欲望に孕むコンクリート巨大防潮堤」 鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター)


 日本列島の中で生きていく際に、「聖地」は一つの備えと祈りと覚悟の担保物件であり、安全のスペアであった。つまり、聖地という聖なる場所は、自然災害の避難地として用意されたのである。日本列島という特異な風土の中で育まれた日本の聖地文化は自然災害の鎮めや防災・減災や警告と密接に結びついている。(中略)
 日本の聖地文化の具体事例といえる延喜式内社が、自然災害の襲来に対する防災・安心・安全装置や拠点でもあったことを指摘することができる。つまるところ、日本の聖地文化とは、日本列島の地質・地形・風土の中から生まれた「生態智」すなわち「自然に対する深く慎ましい畏怖・畏敬の念に基づく、暮らしの中での鋭敏な観察と経験によって練り上げられた、自然と人工との持続可能な創造的バランス維持システムの知恵と技法」を深く宿しているのである。
 そのような地質・地形・聖地文化の構造と機能を無視するかのように、東北被災地沿岸部に何百キロにわたって一律にコンクリートの防潮堤が建設されつつある。暴挙であり、歴史から学ぶことのない態度であるといえる。


(報告書より)


□比較文明学会のウェブサイト
http://www.jscsc.gr.jp/index.do