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シンポジウム「認知症ケアを問い直す:人間らしくあるということ -ユマニチュード-」を開催しました

170305poster.png 2017年3月5日、「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発」プロジェクト 2016年度シンポジウム「認知症ケアを問い直す:人間らしくあるということ -ユマニチュード-」を稲盛財団記念館大会議室で開催しました。


 こころの未来研究センターでは、2014年10月より「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発」プロジェクトとして、「くらしの学び庵」を実施し、大学、行政、医療の現場、社会をつなぐ取り組みを行っています。今回は、プロジェクトの拡大版として、フランスで考案されたケア技法である「ユマニチュード」をテーマに、考案者であるイヴ・ジネスト先生(ジネスト・マレスコッティ研究所長)をお招きして講演会を開催しました。


 基調講演のひとつめは、「日本のケアを切り拓く-ユマニチュードの価値と意義-」と題し、国立病院機構東京医療センター総合内科医長で、医療経営情報・高齢者ケア研究室長の本田美和子先生に講演いただきました。本田先生は、日本にユマニチュードの理念と実践をもたらし、国内での普及に尽力しています。講演では、この6年間の取り組みの実際と背景について数々の実例と共に、ユマニチュードが医療現場でどのように目に見える効果を上げているかを解説。また今後、ユマニチュードが病院施設だけでなく社会の様々な場所でいかに活用できるか、この場にいる先生方と考えていきたい、と話しました。


 続いて、ユマニチュードの考案者でジネスト・マレスコッティ研究所創設者のジネスト先生が登壇されました。人間の尊厳を守るための根源的な哲学と、言語・非言語での多様なコミュニケーション技法に基づいた実践的なケア技術で構成されたメソッドであるユマニチュードを普及するため、ジネスト先生はフランス国内のみならず世界各地の医療現場に足を運んでおられます。今回の講演では、ユマニチュードの理念の根底にある自由、人権、愛を守る大切さについて、自身が医療現場に関わり始めた当初、患者への非人道的な扱いを目の当たりにした経験が、現在のユマニチュード発案のきっかけとなったというエピソードの紹介に始まり、患者との関わりを記録した様々な実例を数多く示しながら、ケアされる人、ケアする人双方が人間性を取り戻す方法について丁寧に解説されました。壇上に参加者を呼び、時に笑いを誘いながら実践方法を紹介する場面もあり、会場は終始熱気に包まれていました。最後に、ジネスト先生は、ユマニチュードの理念と技法が高齢者や様々な患者の尊厳を取り戻し、医療現場、ひいては社会そのものを変えうると強調し、講演を締めくくりました(逐次通訳:高野勢子氏)。


 休憩をはさんで、3名の研究者から学術的な視点からみたユマニチュードについての発表が行われました。ひとつめは、「医療福祉学から見たユマニチュード」と題し、清家理助教が臨床現場と研究をつなぐ立場から、ユマニチュードが社会に浸透し介護現場に根付くための現状と課題について、政策、現場、研修教育、家族介護者の現場の4つの観点から報告・考察を行いました。続いて、吉川左紀子センター長が「心理学から見たユマニチュード」と題し、偶然の出逢いから自身がユマニチュードの研修を受けるまでに至った経緯を紹介すると共に、認知心理学の研究知見に基づいたユマニチュードの可能性について心理実験の成果を示しつつ紹介し、「ケアの実践を通して、ケアされる人だけでなくケアする人の心も育てるユマニチュードのケア技法について、心理学、認知科学、脳科学の観点から実証する研究に取り組みたい」と展望しました。最後に、情報学研究科知能情報専攻准教授の中澤篤志先生が「情報科学から見たユマニチュード」と題し、画像認識を専門とする研究のなかで、ユマニチュードの熟達者と非熟達者のアイコンタクトの数や角度等の違いを測定した最新の研究成果を紹介すると共に、今後、ウエアラブルコンピューティングによるコミュニケーションの定量化を進め、個々のトレーニングの向上やユマニチュードの効果検証に活かす方法を探っていきたい、と話しました。


 最後に、国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副看護師長の大久保直樹先生と、榊原白鳳病院神経内科医師の中塚晶博先生にも登壇いただき、吉川センター長の司会により質疑応答とディスカッションが行われました。日々、高齢者の看護と医療に携わる立場から、ユマニチュード以外の認知症介護の手法との差異や、日本の介護の現状にどのようにユマニチュードの手法をなじませるか日本の介護現場の実情に根差した問いかけがあり、熱心に質疑が行われました。


[シンポジウムの様子]
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[ジネスト先生を囲んで集合写真] ※クリックすると拡大します
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[DATA]
「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発」プロジェクト 2016年度シンポジウム
認知症ケアを問い直す:人間らしくあるということ -ユマニチュード-


▽ 日時:2017年3月5日(日)13:00-17:30(開場 12:30~)
▽ 会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽ プログラム:
・開会あいさつ:吉川左紀子(こころの未来研究センター長・教授)
・基調講演1「日本のケアを切り拓く-ユマニチュードの価値と意義-」本田美和子(国立病院機構東京医療センター総合内科医長/医療経営情報・高齢者ケア研究室長)
・基調講演2「ユマニチュードのもつ可能性と未来」イヴ・ジネスト (ジネスト・マレスコッティ研究所長)
※逐次通訳(仏・日)フランス語通訳:高野勢子
・休憩
・「医療福祉学から見たユマニチュード」清家理(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門特定助教)
・「心理学から見たユマニチュード」吉川左紀子(こころの未来研究センター長・教授)
・「情報科学から見たユマニチュード」中澤篤志(京都大学情報学研究科知能情報専攻准教授)
・休憩
・「認知症ケアの未来を切り拓く-人間らしくあることを支えるために-」ディスカッションおよび質疑応答
【登壇者】イヴ・ジネスト、本田美和子、中塚晶博(京都大学東南アジア地域研究研究所人間生態相関研究部門(フィールド医学)連携准教授、榊原白鳳病院神経内科医師)、大久保直樹(国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副看護師長)
▽参加者数:188名(スタッフ含む)


主催:京都大学こころの未来研究センター
後援:京都市、京都市教育委員会、京都府、京都地域包括ケア推進機構、文部科学省 地(知)の拠点整備事業、公益財団法人ひと・健康・未来研究財団